turn round and round(越野)



私がここに入れるのは残り少しで。
最後の一週間の1日目、オレンジ色に染まった空の下、汗を流して自主練習に励む跡部先輩を横目に溜息を吐いた。
えるは私が立海に来るのを楽しみにしてくれていると言っていた。りんからは心残りが無いように、と何度も言われた。ゴリオは仁王くん仁王くんってそれどころじゃない様子だったけど…。
転校の理由は親の転勤、仕方の無い事だけどやっぱりここから離れるのは寂しい。友達も沢山出来たし、楽しい思い出もいっぱいあるし。今更どう言ったって無理な事は分かってるけどやっぱり寂しいのは寂しい。ちゃんと心入れ替えなきゃって思ってももやもやとした何かは晴れかった。

ここで過ごした事を思い出すと目頭が熱くなった。顔を上げると跡部先輩の後ろ姿が見え、もう跡部先輩がテニスをしている姿もこうやって近くで見ることが出来ないのかな、なんて思い始めると膝に一滴の雫が落ちた。制服の袖でごしごしと擦ると少しヒリヒリとする目元。じんわりと暖かくなって視界が霞んでいく。

跡部先輩に聞こえないようにって、声を押し殺して泣いて居ると突然私にかかる影。目元を擦りながら顔を上げると汗をタオルで拭いながら跡部先輩が私を見下ろしていた。
こんな顔見せちゃダメだ、って咄嗟に思った。
ベンチから立ち上がって逃げるように歩き出すと跡部先輩は私の腕を掴んで私を振り向かせた。

「なんで泣いてんだよ」
「…なんでも、ないっ…です、」

優しく私の頭を撫でてくれる跡部先輩の手の暖かさにまた涙は溢れてきて、止まらない。ぐるぐるってする頭をどうにか落ち着かせようと深呼吸をしようとするも、ただ肩を大きく上下させ息を吐き出すだけ。混乱しているのが見え見えで恥ずかしくて、跡部先輩から逃げたかった。

そんな私を見て跡部先輩は何も言わず抱きしめてくれた。いつもなら押し返すはずの跡部先輩も、今では支えで頼りで、震える手で跡部先輩のユニフォームを掴んで顔を埋める。

泣いている理由を詳しく聞こうとせずに、跡部先輩はただ私の頭を撫でてくれるだけで、その優しさに嗚咽が止まらなかった。寂しいとか悲しいとか、ここから離れたくないという気持ちは強まるばかり。どうしようもなくて跡部先輩に抱き着いてしまった私にも跡部先輩は何も言わず頭を撫でるだけだった。

いっそ、私の記憶から跡部先輩が全部、全部消えてしまえばいいのに。


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