「コラ!鈴木!廊下は走るなとどれだけ言えばわかるんだ!!」 「うるせー髪無し蛙!お前のその惨めな頭何とかしてから言えっつーの!」 「鈴木える!!!!!今日という今日は許さんぞ!!!!!」 「まず私に追い付いてから言えばあ〜!?」
いつものように理科教師の佐山(通称:髪無し蛙)と追いかけっこをする私。人に走るなとか言いながら自分も走ってんじゃん、などと内心悪態をつきながら苦笑すると何かにぶつかって倒れそうになる。
「う、っわ!」 「…鈴木?」 「ゆっゆゆ、ゆ幸村くんっ」
丁度追いついた佐山が幸村くんと私の前に立ち止まり深呼吸をしながら乱れた息を整える(ちなみに私は息切れしてない)。私の肩を掴んでくるりと後ろを向かせる。私の視界に入ってきた佐山に吐き気を催し、背中と肩に感じる幸村くんの暖かさに胸が高鳴った。
「すみません、先生。今日のところは許してやってもらえないでしょうか?」 「だ、だがな幸村、コイツは教師を侮辱したんだぞ?」 「先生、鈴木もちゃんと反省してる事ですし…ね?」
眉間に皺を寄せ佐山を睨む私をチラリ、と見やれば、苦笑する幸村くん。佐山は顔をひきつらせながら私を一睨みすると、すごすごとその場を離れた。ホッとし、溜息を吐くと幸村くんからぽん、と頭を叩かれる。
「鈴木、いつも大変だね」 「え、うん、そーだね!!」 「先生達とも仲がいいみたいだし」 「うううん?そーかな?」
私の返答と表情を見てか、苦笑いを浮かべる幸村くんにポッと顔が熱くなる。頬っぺをパシンと両手で挟むと、じわりと手のひらに伝わる熱に息を吐いた。
「いつもありがとう、幸村くん」 「ん?…ううん」 「真田も幸村くんみたいに優しかったらよかったのになあー」
私がまた溜息を吐くと途端、幸村くんの表情が険しくなる。マズい事を言ってしまったのか、とハラハラしていた所に現れる真田。噂をすればってやつ?
「幸村か……むっ、鈴木!!!」 「ゲッ」 「ゲッ、とは何だ!人様に向かって言う言葉か!!そういえば理科の教師に無礼をはたらいたそうだな!!たるんどる!!!」
なんでお前が知ってんだ!なんて突っ込みたくなるのを抑え、また説教が始まる予感がしたのでとりあえず逃げることにした。
「幸村くんほんとありがとう!じゃああっ」 「鈴木!逃げるつもりか!!」
その場から逃げ出し、そういえばさっき幸村くん怒らせちゃったままだったのを思い出したがもう遅く。しょうがない、また今度会えた時に謝ろう。
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