ああ、!(越野)




「慧く〜ん」
「やーか…わけよ!」

爆弾のような大きさのおにぎりを頬張る田仁志の横に座って膝で山を作る。隣の田仁志に視線を送ると「やらねーらん」とおにぎりを隠された。

「お話聞いて、慧くん」
「また寛ぬ話びんやー、悩むくれーなら本人に聞くぬが早いぜー」
「…そうだけどー、」

作った山に顔を埋めると小さく恥ずかしいんだもん、と呟く和柚を横目でみながら手についた米粒を舌で舐めとると大きく伸びをした。

「わんや寛やねーらん、寛ぬうむいやわからねーらん!」

それだけ言うと立ち上がり片手をひらひらを振り立ち去った。
むす、と頬を膨らませながら立ち去った田仁志を見送り立ち上がると田仁志とは逆方向に歩き出した。

しばらくすると赤い外装の自動販売機を見つけ、気分転換に何かを飲もうかと自動販売機とにらめっこをしていると突然後ろから手が伸びてきてホットココアを指差した。

その手を辿って振り返ると知念が自動販売機のホットココアを見つめていた。一瞬和柚を見下ろすとポケットから小銭を取り出し自動販売機に投入した。ホットココアの下についていた小さなボタンを押すとガコンッと音がして取り出し口に缶が落ちてきた。その缶を取り出し和柚に渡した。

知念かわ渡された缶からじんわりと伝わる熱を手の平で感じながら問いかけるように知念を見上げる。

知念は先ほどと同じように再びホットココアを取り出し口から取り出すとプルタブに指を引っ掛け開けた。そのまま歩き出した知念の後ろを追いかけ着いた先は近くの公園。小さなベンチに座る。自分と知念の距離感にモヤモヤとした何かを感じながらホットココアを胃に流し込む。

ホッ、と息を吐くと和柚は知念を見上げた。その視線に気付いたのか、こちらを向く知念、目が合ったことにドキドキとする心臓を必死に抑えながら和柚は口を開く。

「ありがとう、これ」
「迷ってたみたいやたんから、いきなりすまねーらん」
「う、ううん!良いよ!」

知念くんと同じだから、などと言う恥ずかしい言葉を飲み込むと和柚は俯いた。知念は優しい手付きで和柚の頭を撫でる。その自分より何倍も大きな手に緊張し、更にドキドキが早まる心臓と、熱くなる顔。頬に両手をやり、熱を取ろうとするも顔の赤みと熱は高まるばかりで和柚は俯いた顔をあげられないままでいた。


「あのっ……知念、くん?」
「ぬーやが」
「あ、…えっと……」

何か言葉を発しようとするも何も出てこず、ぐるぐると頭を回しながら必死に話題を探す。

「さ、最近寒くなってきたよね!」
「だーるなぁ、げーんちんかい気い付けろ」
「う、うん!知念くんも、ね」

知念の気遣いに少しほんわかとした気持ちになりながら真っ赤な顔で笑ってみせる。ぎこちない笑みになっていないか、と不安心を抱きながら知念を見つめる。


「知念くんって、ココア好き…なの?」
「さぁ…うままでしちゅんあんに」

自分自身の事を他人事のように答えた知念に苦笑いを浮かべながら和柚は半分まで減ってしまったココアを見つめた。何故か、これが減ってしまうと知念と別れなければならない気までしてきて、必死に考えを振り落とそうと頭を振る。

「知念くん!今度は僕が奢るから!」

気付けばベンチを立ち上がり知念の目の前でそう発していた。突然のことに驚いたような表情をする知念にはっと我に帰るとボンッと音を立てそうな勢いで顔を真っ赤にさせそこから走り去った。
行き先は決めずにただそこから離れた。一心不乱に走っていると何かぼよんとしたものにぶつかった。
無理やり足を止めたものを見てみるとそれは少し前に話していた田仁志で、和柚をみるともの可笑しそうな顔をしていた。

「やー、うぬちら ぬぅがんばやーよ?」
「あ、あっあ、け、慧くん?なんでもないよ!?じゃあね!」

和柚の真っ赤な顔を指差しぷくく、と笑いを堪える田仁志を避け、全力疾走で家までたどり着くと自分の部屋に書き込みベッドに倒れ込んだ。

なんで僕あんな事言っちゃったんだ!

知念の驚いた顔を思い出してしまい、和柚は枕に顔をぎゅうっと埋めると声にならない声をあげた。

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