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order made!

POLO SHIRT





「ポロシャツ何色がいいですか?」
「色はなんでもいいんですけど会社のロゴの刺繍を入れてほしくて」
「成る程、ロゴ入りだったら店頭で対応が出来ないのでネットでのご注文になりますね」
「えっそうなんですか?」
「はい。でも商品はお店にあるものと一緒ですし、ご購入手続きのご案内もさせていただきます」
「本当ですか、助かります。俺こういうネット注文とか苦手で‥」

 分かります、分かります。そう言って相槌をうつと、ポロシャツの色を決める為に一枚だけ商品を手に取った。
 どうやら彼の会社で近くイベントがあるそうで、その為のポロシャツを調達しに来たのだとか。確かに外見は随分と強面だが、その中身はとても繊細であることはわたしもなんとなく分かっている。会社でもそれは周知の事実かもしれないし、彼もきっと優しいからおつかいを頼まれたのだろう。

「よかったらロゴお見せいただけますか?」

 色はなんでもいい、とのことだったけれど、ロゴの色によってはきっと避けた方がいい色がある。そう思って声をかけると、ポケットから取り出したスマホを操作して画像を見せてくれた。

「え、…大手にお勤めなんですね…もう長いんですか?」
「いやいやっ、まだ二年目ですよ」
「え!? ワッごめんなさ…」
「…そんな老けて見えました…?」
「いやあの…この間の試合の時も思ったんですけど…貫禄があるなと…」
「褒め…?」
「もちろん褒めてますよ!」

 どうにも不安そうに見てくる様子に凄く悪いことをした気分になって、被せるように大きな声が出た。だってまさか、まだ入社して二年目だなんて誰も思うはずがないんだもの。…でも待てよ、大手で2年目ってことは、恐らく大学出て二年目ってことだよね…? ということは年も割と近いのかもしれない。そう思うとなんだかちょっとだけ嬉しくなって、親近感が湧いてしまった。

「ロゴ、オレンジと黒なので、無難に白か青とかでもロゴ見やすくて良いと思います」
「白だと肌着気にする人いるから青にしようかなあ…」
「それかネットで頼む時にカラーブロックも選択可能なので、旭さんの好きな色で配色することも可能ですよ」
「え? あ、…え、はい、」
「? いかがなさいました?」
「いやあの、…旭さんって、俺名前言いましたっけ…?」
「…ぁあっ!!!」

 ついあの西谷さんのお陰(?)で呼んでしまった。一方的に知ってしまった彼の名前を、彼の確認もなくナチュラルに。慌てていたばかりに思わず大きく出てしまった声は、お店の端っこにまで轟いていることだろう。恥ずかしくて恥ずかしくて、休憩室に駆け込んで鞄を引っ掴み、そのまま家に帰りたくてたまらない。だけど仕事が終わるまであと五時間程度あるから、それも出来るわけがなく。

「ご、ごめんな、いやっすみません! あの! 西谷さんがそう呼んでいたのでつい…!」
「いや、全然良いんですけど俺も吃驚しちゃって…! えーっと…じゃあ俺も苗字さんって呼んで大丈夫ですか…?」
「もちろん、なんとでもお呼びただいて構いません…!」

 もだもだと二人で喋っていると、少し奥のレジにいるアルバイトの女の子が目をまん丸にしてこっちを見ているのが分かる。お客様並んでるんだからこっち見てる場合じゃないでしょうって、つい睨むように視線を送ったらハッとしてレジに向き直ってくれた。

 最終的にポロシャツの色を青に決めて、ちょっぴりあたふたしたまま旭さんのスマホを操作する。アプリをダウンロードしてもらって、無料の会員登録をしてもらって、一つ一つ細かい所まで決める所は、色と、ロゴの位置と、サイズ。最後に会社の住所を入力して納期までに会社に届くように設定をすれば、あとはもうレジでお会計を済ませるだけだ。彼は本当にネットでの購入というものが苦手らしいが、随分としっかりわたしの案内の通りに操作をしてくれていたし恐らくすぐ一人で操作ができるようになるだろう。

「遅れなければ到着も早いと思いますので」
「本当に助かりました。ありがとうございます」
「いえ、お役に立てて良かったです」
「…そうだ。苗字さん、来週の日曜空いてたりしませんか?」
「日曜ですか? 夜は空いてると思いますけど」
「夜ですか…」
「何かありました?」
「いえ、練習試合あるっていうだけなので…」

 え。なにそれ、…もしかして来ませんか? っていうお誘いですか?
 お札を返そうとした手がぴたりと止まって、口がぽかんと空いてしまう。でも、来週の日曜だなんて。休日のシフトの融通なんて殆ど効くはずもなく、残念ですとばかりに自分の声がトーンダウンしたのが分かってしまった。人、いないもんなあ、残念だ…。

2019.04.14




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