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order made!

camisole





 大きな声では言えないけれど、控えめに言ってめちゃくちゃ最高だったかもしれない。いや、控えめに言わなくてもいいんだけど、とにかく気持ちよかったし、なんにも考えられない程夢中だった。腰にぐるりと回された腕の太さについ昨夜のことを思い出して、身体の奥の方がずくんと震える。
 隣でぐっすり眠っている東峰さんの寝顔はやっぱり年相応には見えない。あどけなさは…うん、ない。大人の魅力だけでいっぱいだ。行為が終わった後にわたしもすぐ寝てしまったけれど、気付けば彼より先に目が覚めてじっと観察し放題。てかナギと西谷さんどうなったかな? スマホ鞄の中だし確認はすぐできないんだけど。今はなんか、その確認をするにはちょっとまだ勿体無くて。

 そうやって一人の時間を堪能していた時、なにかを震わせているような音が室内に響いてきた。これ、多分スマホのバイブ音だ、しかも着信。わたしは音が出るように設定したままだから、東峰さんのスマホの呼び出しかも。今何時かは分からないけど、陽が登ってるからもう朝には間違いない。…そんな時間に電話だなんて、緊急の用事かもしれない。

「…東峰さん、起きて」

 ぺちぺちと頬っぺたを叩いて東峰さんに声をかけると、閉じていた瞼がぴくぴくと動く。回っていた腕が少し強くなって余計に肌と肌が密着した。その瞬間何かが当たっていることに気付いてぴたりと手が止まってしまう。いやしょうがないんだけど。生理現象だし? 分かってはいるんだけど。男の人だし! それよりも電話! 着信! と頬っぺたを叩く回数を増やしてみる。しあわせそうだった寝顔が、真ん中に寄って難しそうな表情になった。

「…ん、んー…?」
「電話、電話です!」
「で……んわ…いま、…えっ!? 今何時!?」
「えっ」
「え!? え、あ……うわっ! ごめ、…!!」

 うわめちゃくちゃ百面相してる。これ今気付いたな、自分のアレがわたしに当たってること。
 昨夜の様子が嘘だったみたいに、顔を真っ赤にして固まっている。嘘、あれだけ積極的で激しかったのに、翌朝になるとこんな顔しちゃうの? 女の子みたい。可愛い。わたしよりも恥じらって、乙女みたいだなと。おかしくなってつい笑ってしまった。その笑い顔に今の状況を把握したのか、大きく息を吐いている。ついでに下半身を押し付けないように体勢も変えて。

「電話鳴ってましたよ、いいんですか?」
「大丈夫です……遅刻かと…吃驚した…多分仕事のアラームです、設定そのままにしてるんで…」
「東峰さん慌てすぎですよ。かわいいなあ」
「か…」
「んふふ」

 仕事のアラームだったら納得だ。だってほんとにずっと鳴りっ放しだから、もしかして緊急かも? って思っちゃったし。

「…やめたんですか、あさひって呼ぶの」

 耳元に落ちてきた低い声に、思わず笑っていた顔が動かなくなる。可愛いと言った時に少しだけむすっとした? とは感じたけど、まさか可愛いって言われたことの仕返しなんて言わないよね? だって可愛いもんは可愛いんだから仕方ない。そもそも可愛いと思ったの、今だけじゃないじゃん。昨日も言ったもん。
 だけどそんなことを言えるような雰囲気でもなく、柔らかいのに怪しげに笑うような東峰さんのことを見たらドキドキしないわけがなくて口籠ってしまった。やめた…っていうか、名前で呼ばせるように誘われただけだから、そんな急に呼び方を変えられるはずないのに。

「き…昨日は昨日なんで…」
「あんなにかわいく呼んでくれてたのに」

 さっきはあんなに焦って可愛かった人が、昨日みたいな獣になるまでに時間はそうかからないらしい。わたしはどうやら変なスイッチでも押してしまったのかもしれない。いや、スイッチじゃない。禁止ワード的なものなのかも。体勢を変えたはずの身体はまたわたしに近付いて、太腿にしっかりと押さえつけられていた。

「ちょ、ちょっと待って東峰さん、」
「あさひ」
「うっ」
「…あさひでいいですから。ちゃんと呼んでください」

 ちょっぴり懇願するような目が、わたしの心をぎゅっと掴む。可愛くて、無意識にあざとくて、でも夜は獣で、それでいて甘えたがり? こんな人をどう扱えば心臓が壊れないように日々過ごせるのかな。
 優しく撫でる掌が昨夜の行為を思い出させて、わたしの身体を熱くさせていく。…あー、ナギに連絡するの、もうちょっとだけ遅くなっちゃいそうだ。

2021.06.10




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