とあるマジバのバスケ部男子

▽チャラいガングロ?



「うるせーよ!! ──、───!!」

 マジバの外から平穏で無い声が聞こえてくる。自動ドアの向こうを見ると、桃色の髪をした可愛い女の子と、バスケットボールを持っている青色の髪をした男の人が揉めていた。
 ここのマジバ周辺は結構平和で治安も良いから、こうやって揉め合いみたいな声がする事は滅多に無い。……少し恐いな。

 お客様見送りついでに眺めていた私に、右側カウンターのチャラ男先輩が様子を見てくるよう顎で合図してきた。店の外にいる青髪の男の人に劣らないこの強面な先輩に、私は頭が上がらない。
 こういうの、チャラ男先輩の方が適役だと思うんですけど…。当たり障り無く言ってみたけど、ダメだった。何が「オレが出ていったら騒ぎが大きくなる」だよ。確かにそうでしょうけど。

 ちょうどお客様いなくなっちゃったし、チャラ男先輩が猫かぶりな態度で接客始めちゃったし…仕方無い、私が行くか。




「すみません…どうかしたんですか?」
「あっ…、ごめんなさい!!」

 桃髪の女の子が謝ってきた。顔が可愛い子は声まで可愛いんだね。この可愛い声は店内には聞こえて来なかった。それより、青髪の男の人の声がずっとうるさかったんだけど。

「オメー何の用だよ」

 ギロリと青髪の男の人に睨み付けられた。感じ悪っ!
 「声がうるさいんですよガングロ!!」と言ってやりたいけど、下手にバイト中の服装でやらかしたらマジバの評判が下がってしまう。堪えろ、私。

「えっと、そのもう少し声を抑えて…」
「は? 知らねーよ」

 謙虚に出てみるも偉そうな態度をとられてしまった。桃髪の女の子が一生懸命私に謝ってくる。貴女は悪くないよ! 悪いのはこのガングロだ。

 ガングロの彼は、興味無さそうにバスケットボールを片手でくるくる回し始めた。凄いな、ボールでこんな事出来るんだ…じゃない。

「店内のお客様に迷惑なんです! 少しで良いので静かに「あとさ、スカート捲れてんぜ、オネーサン」

 下を向いたら、見事に捲れていた私のスカート。慌てて直したら、ガングロの彼はしてやったりな顔で私を見下ろしてきた。桃髪の女の子が「最低!」と言ってガングロの彼の背中を殴った。

「ま、良いや。良いモン見せてもらったし、マジバ行くか」
「うげっ…」
「何だよその顔。マジバの店員はスマイルだろ、スマイル」

 ズカズカと歩いて行ってしまったガング……お客様の後を桃髪の女の子と追う。桃髪の女の子は、「さっきまでマジバ嫌がってたくせに…」と言いながらどこか嬉しそうに笑っていた。訊いてみたら、マジバに行くか行かないかで口論してたんだって。

 この後、私は可愛い子を連れてきてくれてありがとうとチャラ男先輩に褒められました。今日はいつもより疲れた……けど、悪い日じゃなかったよ!




fin.

(2013 06/16〜10/20)








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