とあるマジバのバスケ部男子 ▽ハイスペックパシリ バイト中、ドリンクの機械が一時的に止まってしまい困っていた時に彼は入店してきた。パーカー姿で吊り目が特徴的なお客様。何故か息をゼエゼエさせていた。よっぽど疲れているみたいだ。 先輩方がドリンクの機械と戦っているため、現在私以外のレジは休止中。お客様は誰もいない。彼は迷わず私の元へやって来た。 「すんませーん、これセットでドリンクLサイズ2つー」 「申し訳ありません。ただ今ドリンクの機械が…」 「あ、そうなんすか? なら、待ってるんで大丈夫でっす!」 「え?」 彼の反応はとても意外だった。機械が故障していると伝えただけで帰ってしまうお客様が何人もいたから。いつ直るかも解らないのに、待っていてくれるって… 「手ぶらで戻ったらエース様に睨まれそうなんで」 「エース様?」 「バスケ部のなんすけど……あ、せっかくだからお話しましょうよー! ね!」 この彼、ひょっとしてそのエース様のパシリなんじゃ……なんて思ったのは秘密。 必死にドリンクの機械を殴っている先輩方を手伝おうかと思っていたんだけど……お客様を逃がすなと目で合図されたため、会計してから彼に付き合う事にした。 お客様を前にすると少なからず緊張する。だから、こんなに気楽に接客できるのは初めての事だ。 「そんで、うちのエース様がシュート決めて余裕勝ちだったんすよ!」 「すごいですね!」 彼との会話はとても楽しかった。話題はバスケ部や、そのエース様の事。バスケの話は本当に面白い。彼が話すと、勢いが加わって更に面白味が増す。 「お客様の話聞いてたら、私もバスケやりたくなっちゃいました!」 「マジっすか! 嬉しいっす!」 ガシャーン 先輩のクリーンヒットがドリンクの機械を復活させた。 ちょうど会話も一段落したところだったので、私はすぐ商品準備に取りかかった。 「大変お待たせいたしました…」 「良いんすよ! オレは超楽しかったんで!」 「私も楽しかったです! ありがとうございました!」 「どういたしまして! それじゃっ!」 店の外から「ちょっ! 真ちゃんごめんって!」と彼の声。 その後、変な乗り物付きの自転車を漕ぐ彼の姿が店内から見えた。……入店した時疲れていたのは、アレを漕いでいたからなんじゃ……。 ああっ、待たせてしまって本当にすみませんでしたっ…! fin. (2013 05/01〜05/20) [mokuji] |