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オレの運命





……運命だと思った。

「苗字名前です。お隣よろしくね、高尾くん!」






 今日、帰りのSHRで席替えをした。
 オレと真ちゃんは窓側で、前後。オレが一番後ろになった。黒板は、よし、ギリ見える。真ちゃん、身長も座高も高いからなぁー…。

 で、オレの右隣に座ったのが前から憧れていた苗字名前ちゃんだった。

 名前ちゃんは、休み時間クラスにあまりいない。今まで席が遠く、オレは挨拶を交わす程度しか出来ないまま過ごしてきた。
 話したのは少しだけなのに、オレの名前を覚えていてくれたみたいだ。やべぇ、超嬉しい!

「名前ちゃんてさ、いつも昼休みお弁当持ってクラス出て行くよね。どこか行ってるの?」
「え? あ、隣のクラスに仲の良い子がいて、その子と食べてるんだ」
「そうなんだ。…とか言って彼氏なんじゃねぇの〜?」
「えぇ〜違うよ! 彼氏なんて!」

 声の雰囲気的にいないみたいだ。よっしゃ! オレにもチャンスはあるって事だな!

「…知ってたの? 私がいつもクラスを出て行くの…」
「え」

 急に真顔になった名前ちゃん。あ、まずい。即返す言葉を探す。

「オレ、視野が広いんだよなぁ…」
「それ、ホークアイだよね! 知ってる!」

 危ねぇ…。いつも見てるから!なんて素直に言ったら絶対ドン引かれる。ってかホークアイ知ってんの、名前ちゃん!
 それを言えば、「ほら、高尾くんて人気者だから!」って答えてくれた。……顔を赤くしながら。

 え…どういう事? 名前ちゃんは少し俯き気味だ。この反応は…もしかして、脈ありなんじゃね?

「名前ちゃ…」



キーンコーンカーンコーン



 タイミング悪く、チャイムが鳴った。

「ごめんね、私帰らないと。じゃあね高尾くん、と! 緑間くん! 二人とも部活頑張ってね!」

 真ちゃんは、せっかく名前ちゃんが手を振って挨拶してくれたのに一瞥しただけだった。
 オレは元気に振り返しちゃうぜ!

「ありがとー!」
「また明日!」

 はぁー…なんて優しくて良い子なんだろう。明日から学校生活がますます楽しみになる!

「真ちゃん…!」
「何だ」
「名前ちゃん…良い子だな! オレ、今本当に幸せ!」
「高尾…一つ忠告しておくのだよ」
「ん?」

 真ちゃんは振り返って、オレを見た。
眉間に皺寄せちゃって。何、嫉妬してんの? まさかね…。

「今日のおは朝占い、蠍座は最下位なのだよ」
「は?」

 どういう事だよ。今せっかく良い気分なのに…。

「…真ちゃんはオレに水差そうっての?」
「そうでは無い」
「じゃあ、何」
「今日の蠍座は、最悪の出逢いが待っているから要注意…だったのだよ」
「え?」

 この後の予定は部活に行くだけだ。誰かに会う予定も無い。……まさか。
 最悪の出逢いって…名前ちゃん…?

「オレから言えるのはここまでだ。せいぜい、気を付けるのだよ」

 おは朝占いはよく当たる。本当によく当たる。
 それでも、占い程度でオレの心は曲がんねーよ!


 この時のオレは、本当に何の疑いも無く…名前ちゃんとの出逢いが最高だって信じてた───。








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