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 帝光学園高等部吹奏楽部。
 通称『帝吹』。

 部員数はそこそこ、コンクール出場記録無し。特に目標がある訳でも無く、ただ校内の演奏会だけのために活動している平凡な吹奏楽部。そんな中に、苗字名前はいた。















***ハモルリズム***















 満開だった桜は先日の雨でほとんど散ってしまった。閑散としている葉桜が帝光学園のあちらこちらで見受けられる。
 新入部員が加わり、帝吹の新体制がスタートして早二週間。勧誘や進級の準備で忙しかった名前も平穏な部活ライフを取り戻しつつあった。


 放課後、掃除当番で部活に遅刻してきた名前は、練習教室へ向かうべくフルートを片手に高等部の廊下を歩いていた。


「名前、ちょっと良いかしら?」

 背後から聞こえた明るい声に名前は笑顔で振り返る。名前を呼び止めた彼女──相田リコもにこりと笑った。
 リコは帝光学園高等部2年生にして帝吹の顧問を務めている、名前のクラスメイト。付き合いは高等部からの名前とリコだが、1年生の時にクラスが一緒で意気投合し、今では大親友の関係にある。今年度も同じクラスになれたと知った時は手を取り合って喜んだものだ。

 名前が駆け寄ると、リコは手に持っていた楽譜を差し出した。フルート用が2枚と、オーボエ用が1枚。曲名を見て名前は目を輝かせた。

「次回の演奏会の新譜! リコちゃんありがとう!」
「ふふ、どういたしまして。悪いんだけど名前、今日は生徒会の仕事が入っちゃったからパートの巡回をお願いしたいの…」
「いつものだよね…了解!」

 本日の放課後は各楽器分かれてのパート練習。今年度の1年生は実力者が沢山入っているものの、仲があまり良くないパートが多い。その仲の悪さは先輩後輩だったり同級生同士だったり様々だ。最近ではそれを宥めるためにパート練習の時はリコが巡回するのが恒例となっていた。リコは生徒会も担っており忙しいので、時折名前が代行している。
 リコは、特に今年のトランペットは…と顔を歪ませた。そんなリコを励まそうと、名前はもう一度笑顔を向ける。

「大丈夫! いつか、皆仲良く出来る日が来るよ!」
「そうね、ありがとう。じゃあよろしくね!」

 リコは安堵の表情を浮かべ、生徒会室のある方向へ走っていった。名前はその背中に「いってらっしゃい」と小さく呟く。

 左腕に身に付けている腕時計を覗くと時刻は既に16時。廊下は帰宅する生徒達で混雑し始めている。人とぶつからないように楽器を守りながら、名前は急ぎ気味に足を進めた。


(皆、仲良く…。何とかならないかな。私に出来る事は何だろう)








***


▼今回の登場

≫相田リコ
高等部2年。頼れる生徒顧問。肺活量アップのために運動部並のメニューを考えるので一部からは「カントク」と呼ばれている。生徒会所属。


 ここで、音楽用語など軽く説明して行こうかと…! ずっとやりたかったパロディ夢ですが、終わりが見えていません。どうなる今後!←


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