楽しい委員会 「高尾和成……緑間真太郎……だから真ちゃんだったのか!」 一年間同じクラスで過ごして来たとは思えない反応だ。名前……初めはお前の事が苦手だったオレでも、名前くらいは知っていたのだよ…。少し凹む。 だが、それでこそ名前だ。オレの許容範囲なのだよ…多分。 「そういや、名前の友達は? このクラスにはいねーの?」 「また隣のクラスなんだよ〜…寂しい…」 「お前みたいな女がこれ以上増えるのはごめんなのだよ」 「何だとぅ!」 キーンコーンカーンコーン オレ達は休憩時間も話続け、そのまま2時限目のLHRに突入した。 * 「では、クラス委員長、誰か──」 新しい担任が全体に声をかける。2時限目は、定番の委員会決めというものだった。これは、委員長さえ決まれば後はスムーズに進行される。一年前に経験済みだ。 辺りを見渡す。1年の時委員長をやっていた奴がこのクラスには誰もいなかった。 ……… 時間だけが流れていく。名前も高尾もしらけている。 委員長とは案外面倒な役だ。立候補がある方が珍しい。 (こういう時、誰かがやってくれるか推薦者を出してくれれば良いものの…) バスケ部を優先するオレは、正直関係が無いが。…名前は部活をやっていないな。こいつを推薦してやろうか…。 左側の名前を見ると、ばっちり目が合った。…何故こちらを見ているのだよ!! 「緑間くん、」 「な、何だ…」 「委員長とか似合いそうだね! …って事で、推薦するね」 「はあ!?」 名前は手を挙げると、オレの名前をはっきり言った。クラスメイトから拍手喝采。 いや、ちょっと待て。待て。待て!!! 苗字名前……この女の行動は予測不可能だった!! してやられたのだよ!! だが、オレだって黙っている訳にはいかない。 「先生…オレは部活が忙しいので…」 「ギャハハハ! 名前ナイス! マジウケる! 頑張って真ちゃん!」 「………」 高尾!!! 空気を読め馬鹿!!! 高尾を睨んでいる間に、オレの名前が黒板に書かれた。何なのだよ!! これは何かの陰謀か!!? (仕方無いのだよ…) オレは諦めて教壇の前に立つ。名前は後ろ座席から手を振っていた。高尾は爆笑し続けている。 大学を合格された宮地さん、お願いします。こいつら…轢いてください。 「緑間、後は頼んだぞ」 先生まで酷いのだよ。 オレは委員会の一覧を手に取った。……反撃、してやる。 「委員長、緑間真太郎だ。まずクラスの幹部から。副委員長、高尾和成。書記、苗字名前。今すぐ前へ出ろ」 「「はあ!?」」 名前と高尾の声はクラスメイト達の拍手で掻き消された。ふん、良い気味だ。 やるからには人事を尽くすつもりだが、オレばかり面倒事を押し付けられるのは納得がいかない。 名前と高尾はゆっくりと教壇へ歩いてきた。やる気無しに。 「やられたぁ…」 「真ちゃんひでぇよ!!」 「うるさいのだよ」 異論は認めない。オレは、何も無かったかのように、委員会決めを再開させた。 名前と高尾の要領が良いのはよく知っている。文句を言いながらもオレをサポートしてくれた二人に、心の中で礼を言う。やはり、こいつらを呼んで正解だった。数多い委員会が、10分足らずで全て決まった。 「緑間くん! 名簿書けたよ!」 「まっ、これから頑張ろうぜ!」 この二人となら委員長も悪くないかも知れないのだよ。 オレは少しだけ笑って見せた。 [mokuji] |