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楽しい委員会




「高尾和成……緑間真太郎……だから真ちゃんだったのか!」

 一年間同じクラスで過ごして来たとは思えない反応だ。名前……初めはお前の事が苦手だったオレでも、名前くらいは知っていたのだよ…。少し凹む。
 だが、それでこそ名前だ。オレの許容範囲なのだよ…多分。




「そういや、名前の友達は? このクラスにはいねーの?」
「また隣のクラスなんだよ〜…寂しい…」
「お前みたいな女がこれ以上増えるのはごめんなのだよ」
「何だとぅ!」


キーンコーンカーンコーン


 オレ達は休憩時間も話続け、そのまま2時限目のLHRに突入した。









「では、クラス委員長、誰か──」

 新しい担任が全体に声をかける。2時限目は、定番の委員会決めというものだった。これは、委員長さえ決まれば後はスムーズに進行される。一年前に経験済みだ。
 辺りを見渡す。1年の時委員長をやっていた奴がこのクラスには誰もいなかった。



………



 時間だけが流れていく。名前も高尾もしらけている。
 委員長とは案外面倒な役だ。立候補がある方が珍しい。

(こういう時、誰かがやってくれるか推薦者を出してくれれば良いものの…)

 バスケ部を優先するオレは、正直関係が無いが。…名前は部活をやっていないな。こいつを推薦してやろうか…。
 左側の名前を見ると、ばっちり目が合った。…何故こちらを見ているのだよ!!

「緑間くん、」
「な、何だ…」
「委員長とか似合いそうだね! …って事で、推薦するね」
「はあ!?」

 名前は手を挙げると、オレの名前をはっきり言った。クラスメイトから拍手喝采。

 いや、ちょっと待て。待て。待て!!!

 苗字名前……この女の行動は予測不可能だった!! してやられたのだよ!!

 だが、オレだって黙っている訳にはいかない。

「先生…オレは部活が忙しいので…」
「ギャハハハ! 名前ナイス! マジウケる! 頑張って真ちゃん!」
「………」

 高尾!!! 空気を読め馬鹿!!!
 高尾を睨んでいる間に、オレの名前が黒板に書かれた。何なのだよ!! これは何かの陰謀か!!?

(仕方無いのだよ…)

 オレは諦めて教壇の前に立つ。名前は後ろ座席から手を振っていた。高尾は爆笑し続けている。
 大学を合格された宮地さん、お願いします。こいつら…轢いてください。

「緑間、後は頼んだぞ」

 先生まで酷いのだよ。
 オレは委員会の一覧を手に取った。……反撃、してやる。

「委員長、緑間真太郎だ。まずクラスの幹部から。副委員長、高尾和成。書記、苗字名前。今すぐ前へ出ろ」
「「はあ!?」」

 名前と高尾の声はクラスメイト達の拍手で掻き消された。ふん、良い気味だ。
 やるからには人事を尽くすつもりだが、オレばかり面倒事を押し付けられるのは納得がいかない。

 名前と高尾はゆっくりと教壇へ歩いてきた。やる気無しに。

「やられたぁ…」
「真ちゃんひでぇよ!!」
「うるさいのだよ」

 異論は認めない。オレは、何も無かったかのように、委員会決めを再開させた。




 名前と高尾の要領が良いのはよく知っている。文句を言いながらもオレをサポートしてくれた二人に、心の中で礼を言う。やはり、こいつらを呼んで正解だった。数多い委員会が、10分足らずで全て決まった。

「緑間くん! 名簿書けたよ!」
「まっ、これから頑張ろうぜ!」

 この二人となら委員長も悪くないかも知れないのだよ。
 オレは少しだけ笑って見せた。








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