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改めまして





「おはよー! 二人とも!」

 進級した次の日。元気な名前の声に、オレと真ちゃんはそれぞれのテンションで挨拶を返す。
 今年度も嬉しい事にクラスメイトになったオレ達三人は、昨日黒板に書かれていた自由席で良いというありがたいお告げに従い、一番後ろの席を陣取っていた。

「いや〜! まさか同じクラスになれるとはねぇ」
「だねっ! また楽しくなりそう!」
「ま、まあ、喜んでやらん事も無いのだよ」
「緑間くん可愛い!」
「うるさいのだよ」
「これも運命なのだよー!」
「名前! 真似をするな!」

 もしかしたら本当にオレら、運命共同体なんじゃねぇかな。そうぼやいたら、名前は嬉しそうに同意してくれた。
 ちょっと真ちゃん、そんな冷たい目でオレの事見ないでよ…。随分名前と扱い違うよな、相変わらず。

 今日は、LHRを2時間。その後はすでに授業が始まるハードスケジュール。真ちゃんと名前がいるなら楽しめそうだから、やってやろうじゃんって感じだけどな。









(暇だな……)

 1時限目は近くの席同士で自己紹介ってどういう事。
 今回の担任、適当過ぎんだろ…。クラスメイトの中には寝てる奴もいる。

 オレと真ちゃんは、名前の席に椅子を寄せた。雑談でもしようと思って。そしたら、名前は意外な一言をオレ達に発した。

「私、よく考えたら二人の事あまり知らない…」

 せっかくだから教えて、二人の事。真剣な目でそう言われた。
 オレの胸がときめく。……暇だとか思ったさっきの自分を殴り飛ばしたい。
 名前の可愛さ、絶好調なんだけど。ね、真ちゃんもそう思うっしょ!

「名前が言うなら、自己紹介やりますか!」
「そうだな」
「…ありがとう!」

 照れたような笑顔。今年度もこの笑顔を見ていられるオレ達は、幸せ者だ。
 一年間頑張ろう、このクラスで。真ちゃんと、名前と。オレは改めて心に誓った。




「えっとね…まずは……二人のフルネーム、教えてくれない?」
「「……」」

 春なのに、オレ達の周りを冷たい風が通過していった。

「わ、私ね…二人の事も二人の関係も大好きなんだけど……下の名前知る機会無くてさ…」
「高尾和成!!!」
「緑間真太郎なのだよ。あと、二人の関係は余計だ」

 この質問でオレ達は、名前がいかにオレ達個々に興味が無かったのかを再認識させられた。

「名前らしいのだよ…」
「うん、オレもそう思う」
「え?」








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