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腐女子のリア充




「……え? か、彼氏が出来た…?」

 私は普段通り登校して、普段通り授業を受けて、普段通り昼休みに隣のクラスの友達の元へ向かった。

 趣味がばっちり合うこの友達と私はずっと、リア充爆ぜろと二人で笑い合って同人誌や漫画を貸し借りしてきた仲だ。その友達からリアルで彼氏が出来たとの発言。…聞き返したくもなるだろうさ。

 詳しく訊くと、その彼氏は3年生で重度のアイドルオタクらしい。彼の所有物であるプロマイドを友達が廊下で拾ったのがきっかけだったそうだ。
 次元は違えど求めるものがあると意気投合し、何回か会っているうちにお互い恋愛感情が芽生えたとか。

 それから友達は、彼の容姿や性格が好きなキャラクターに似ている事を延々と語った。友達の顔は幸せそうだった。リア充め!









(……明日からどうしようかなぁ)

 友達が彼氏と昼休みを過ごしたいとお願いしてきたので、私はそれを受け入れた。だけどそうしたら私ひとりぼっちだなぁ。どうしよう。5時限目の自習時間、私は悩んでいた。

「名前ー、元気無くね?」
「どうかしたのか?」
「あ…えっと」

 左側から高尾ちゃんが、右側から緑間くんが訊ねてくる。
 私の事が好きだと伝えてくれた高尾ちゃんと緑間くんにはあんまり言いたくない気もしたけれど、心配してくれる優しい二人にはきちんと事情を説明した。

「隣のクラスの友達にさ、彼氏が出来たんだって」
「へー、おめでとうじゃん! どんな人なの?」
「3年生で、アイドルオタク。友達の趣味的に…多分髪の色が派手で暴言を吐く人」
「「……」」

 黙っちゃったよ。言うべきじゃなかったかな…。
 二人は顔を見合わせてる。近い…近い…! あぁぁやっぱりこの二人は良いねぇ! そのままキスしちゃえば良いのに!
 勝手にモキュモキュ動き出す私の両手を、高尾ちゃんが机に叩き付けた。…いたいよ!!

「う〜…二人とも急に黙って、どうしたのさ…?」
「いや…すっげぇ心当たりのある人いるから…」
「名前、それは恐らくオレ達の先輩なのだよ……」
「えぇ!?」
「ほら、スタメンの…わかるっしょ?」
「あ! あの人か!」

 私は、観に行ったバスケ部の試合で高尾ちゃんや緑間くんに「轢く」だの「殺す」だの物騒な発言をしていた先輩を思い浮かべた。あの人アイドルオタクだったんだ…。人は見かけによらないものだね。

「で、友達が、これからはその先輩と昼休み過ごすんだって。だから、私ひとり…」
「名前…それ本気で言ってる?」

 高尾ちゃんの目が鋭くなった。緑間くんを見ると、同じような顔してる。両隣から睨まれてるんだけど…どういう事?

「真ちゃん、どうよ?」
「呆れる……言わないと解らないのか」
「うん…」
「名前、オレ達はお前の彼氏ではないが……友達以上の、特別な関係にあるのだよ」

「…うん?」
「………」
「うぉい! 名前! 真ちゃんが頑張って恥ずかしい事言ったんだから一発で理解してやれって!」
「高尾ぉぉ!!」
「いだっ!!」

 真っ赤な顔した緑間くんの左ストレートが、高尾ちゃんの頭を直撃した。痛そう!!

 特別な関係って緑間くんは言ったよな…。友達以上の……

「つまり……もういろいろ面倒だから手短に言うと、友達以上の関係にあるオレ達は昼休みとか一緒に過ごすのもありなんじゃね?…っつー訳よ」

 頬を掻きながら照れたように言う高尾ちゃん。緑間くんはブンブン首を縦に振っていた。

 なるほど。二人の言いたい事やっと解った。

「私、ひとりじゃないね!」

 二人は、顔を見合わせて笑った。あぁぁやっぱりこの二人は良いねぇ!



 ねぇ、隣のクラスの友達。明日から私も、ある意味リア充するよ。友達以上のこの二人と。だから、貴女も末永くお幸せにね!




fin.








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