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朝陽の中、愛しい君へ




「おはよ、名前」
「おはよっ、高尾ちゃん!」

 今日、体育館はワックスがけで使用禁止。朝練も無ければ放課後練も無い。だけど、今朝は朝練と同じくらいの時間に名前と登校している。
 名前は真ちゃんがいないのを疑問に思ったのか質問攻めをしてきた。オレと二人きりでも通常営業の名前に苦笑する。ああ、この笑顔がオレに向けられるのは今日で最後かも知れないんだよな。









「こんなに早いと誰もいないね」
「そうだな」

 教室には、オレと名前だけ。朝陽特有の清々しい眩しさに名前が目を細めて微笑んだ。

 さあ、どうすっかな…。告白って何言えば良いんだっけ。おかしいな…オレ、一度はしようとしてたはずなのに。
 あの時はすぐに好きって言える程度の軽い気持ちだったからな……。今はマジ、言葉に詰まる。

 そういえば名前とは今までにいろいろな事があったなぁ…。マッサージしてもらったり助けてもらったり…あ、押し倒された時もあったわ。
 一緒に過ごしていくうちに新しい名前を沢山知っていった。いつの間にかこんなに好きになってた。前の「名前ちゃん」以上に、今の「名前」を。


「高尾ちゃん、話あるんだよね? 何かな? 相談とか何でも聞くよ!」

 椅子に座ってオレと向かい合う名前。オレの大好きな眩しい笑顔。印象は変わっちまったけど、この笑顔だけは初めて出会った時から変わってない。

 これからもオレの隣で笑っていて欲しい。そんな気持ちを込めて、言葉を押し出した。


「名前、好きだ」










 硬直する、オレと名前。タイミングを見失ってお互いに目を逸らせなくなった。
 名前は黙ったまま動かない。オレの真剣さが伝わったのは良かったけど、どうすんだこの状況。

「ま、待って…えっと」

 名前の声で我に返ったオレは真ちゃんとの約束を思い出し、急いで名前の口を塞いだ。

「むぐっ!?」
「あー…ごめん。返事はまだしないで。明日まで待って」

 オレが言い終わると同時に、教室のドアが開いた。名前との二人きりはこれでおしまい。


 既に時刻は一般生徒の登校時間。窓の外を眺めればクラスメイトがちらほら。その中に緑髪のあいつもいた。今日の蟹座のラッキーアイテム何だっけ。こっからじゃ解んねーわ。




 ざわつき始める教室。
 名前は隣で1時限目の支度を始めた。オレをチラ見して照れてる姿が可愛い。

 コミュニケーション能力が高いオレでも、さすがに告白した後は何も喋れない。自分の顔を隠して、深呼吸しながら落ち着くので精一杯だ。
 多分、今日はまともに生きられない……つーか、心臓が持たない。








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