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リヤカー登校





「ふっ…くっ、はぁ、はぁ…」

 真ちゃん、オレもう辛いよ…。いつまで…こんなこと…。これ以上は…だめ…ッ…オレ、もうイっちゃ…「名前ちょっと黙っててくんねぇ!!?」「ゲフゥッ!!」
「真ちゃあああん!!!」




 ……状況を整理しよう。
 登校中。いつも通りじゃんけん全敗の高尾にリアカーを漕がせていたところ、うちのクラスメイト苗字名前が現れ突如卑猥な台詞を呟き出したのだ。

「えぇー!? 何で!! せっかくの緑間くんとの絶頂シーンが…」
「ゲホッ! グホッ! 苗字…オレもお前の口をちぎってやりたいぐらい黙ってほしいのだよ…」

 だから高尾が叫んだのも、オレがお汁粉を喉に詰まらせたのも、今日のラッキーアイテムである羊のぬいぐるみが全く役に立たないのも、全部この苗字のせいなのだよ!!


 先日、不慮の事故で抱き合ってしまったオレ達の前で盛大なカミングアウトをかました苗字は、今までのおとなしい態度が一変してオレ達に付きまとうようになってしまった。
 そのせいで高尾は暴言が増え、苗字を呼び捨てするようになった。

 高尾本人から直接聞いた話だが、どうやらあの日の放課後、苗字に告白する予定だったらしい。
 想いを伝える前に本性が知れて良かったな。今回ばかりは同情してやるのだよ。

「せっかく感情込めたのに!! ねぇ、勃った? 勃った?」
「ばばばば馬っ鹿じゃねぇの!!!」
「高尾くん照れてる! やっぱり緑間くんの事大好きなんだよね!」
「…真ちゃんに照れてんじゃねぇよ…。オレは…」
「え?」
「クッソ! 何でもねぇ…!!」

 高尾…この様子だと、ただ単に素直でなくなっただけな気がするのだよ…。
 まだ想いを捨て切れていないのか? オレには解らん。

「ふわっほ! 緑間くんの口からお汁粉が!! 高尾くん! 舌で拭ってくれたまえ!」
「うわあああ!!! やめてえええ!!!」
「うるさいのだよ、高尾」

そして苗字。頼む、そろそろ黙れ。








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