十二月晦日/危機一髪な状況

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(ぴちょんと風呂場から滴る水の音に混ざった鳥の囀りが妙に頭に響く。背面の遮光カーテンを抜け聞こえる学生らの生命溢れる声が今だけは呪詛に近い。内容がないようと脳内で再生され続けて気が狂いそうなのは昨日から小説を綴るのに熱中し過ぎて輸血パックに手を付けていないからであるのは確実、しかし飲もうと思っても遅く身体が上手く動かない。ついに指が万年筆を落とすと原稿用紙に墨色のインクが滲む、からからの唇が震えて喉から掠れたヒューという凡そ聞こえてはならない悲鳴がひとつ。自分しか居ないならばとそろ、そろと床を這い段ボールの前へと忍び寄り指先の感覚だけを頼りに冷たい袋の上部にあるチューブを咥え、牙で穴を開け舌にしとりと染みる赤黒に焦点が戻り始め。)……し、死ぬかと思った。死なないけど……。もし担当が来ていたら全身の血を吸い尽くしてたかも知れないのが恐ろしいよ。
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