tales | ナノ

「で、結局何でいきなり泣きしたわけ?俺さま超ビビったんだけど」

ロイド君とがきんちょがリフィルさま達に大袈裟に言うものだからかなりきつく説教されたんだぜ、と不機嫌全開の表情で俺に突っ掛かってくる自分と瓜二つの顔。近くで見てもやっぱり綺麗。白い肌も女みたいだし、深い瞳がゆらりと揺れて吸い込まれそうだ。但し今現在に限るとその瞳の中には理不尽な説教を受けたと言うことへの不満も混じっているけれど。でも仕方ねーじゃん、俺さまだってこの旅の中で随分と表情が豊かになってしまったのだから。後ついでに身体的では無くて精神的にも女らしくなったと思う。何と言うの、恥じらいとか、そんな部類の感情を持つようになったと言うか。ほら、さっきみたいにジーニアスに母性愛もどき発揮しちゃったりとか?だから多分そんなノリで涙腺も緩みやすくなったのだ。ほんの些細なこいつの変化が嬉しくて堪らない、ちゃんと俺さま達は自分らしく生きれているのだと実感できて、喜びから心が震えてしまう。こいつにそれを悟られるのは何だか癪だから言わないでいたけれど、ほら、恥じらい、ね。

でも今回のは流石にこいつに悪かったかなあと思わない訳では無いので(だって危うく夕食のデザートであるメロンをこいつだけ無しにされかけたのだ、それがどれだけ重要な問題かは俺さまが一番分かる。メロンをお預けなんて、絶対に耐えられない!)ベッドの上に座る俺さまを上から見下ろすようにして立っているそいつに「ごめんね?」とコレットちゃんの真似をして自分なりに精一杯可愛らしくごまをすって謝ってみる。しかし残念な事にこの甘えて誤魔化す作戦は身内のこいつにはあまり効果は無かったらしく「俺さまは理由が聞きたいの」と不機嫌と言うよりも不貞腐れていると表現した方が適切そうな子供じみた表情をしてきた。そんなこいつがちょっと可愛いかも、なんて思ってしまったり。「なあ、しゃがんで」俺さまが楽しげにそう言えば何か言いたそうにしながらも床に膝をついてしゃがんでくれる辺り、こいつはとても優しい。あ、ロイド君達のお人好しがうつったのかもしれないな。何をされるのかと警戒している目の前の男に出来るだけ優しく微笑みかけて、首に腕を回しぎゅうとその体を抱き締める。華奢な訳でも無く、そこまで筋肉質でも無い体はこうやって触れていてすごく落ち着くし気持ちが良い。

「え、ーと…、ハニー?何か今日変じゃない…?」

「でひゃひゃひゃ、こんなに可愛い女の子に変、だなんて、しつれーな奴」

じわりと伝わってくる体温。ロイド君達の温かさとも、ジーニアスやプレセアちゃんの子供体温ともまた違う、特別で、一番安心出来る、確かな温もり。嗚呼好きだなあと思う。この温かさも、男にしては少し高めこの音も、湖面を連想させる青も、全てを包み込む様な赤も、全部、全部愛おしい。俺さまが女で、こいつが男。もし逆だったならそれこそさっさとこの体を組み敷いていたのに、なんて不健全な想いを巡らす。それくらい好きだよ。俺さまが笑うのも泣くのも悲しむのも怒るのも、お前が理由だからね。

「好き、だーい好き、ハニー」

「…それはこっちの台詞なんだけどなあ。愛してるよ、可愛いダーリン」

重なったのは唇だけじゃ無くて、心も、なーんて?嗚呼もう、また泣いちゃいそうだよマイハニー!

(あ、そう言えばまだ理由教えて貰ってない!)(…この空気でまだそれ聞くなんて、ロイド君の鈍感までうつったんじゃねえのお前)


thanks! wizzy




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