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食事の当番は大体二人ずつ、今日もその例外に漏れずコレットとゼロスが当番に当たりいそいそと支度を始めた。袋の中から食材を取りだして玉ねぎを出してみたりジャガイモを出してみたり、多分メニューを決めているのだろう。遠目からその光景を見ていると何だか微笑ましい。神子同士と言う事もあってかコレットとゼロスは兄妹の様にお互いを気に掛けているし(あ、セレスに怒られるかも)戦闘でも絶妙の連携を見せてくれる。それはもう、流石だな、を通り越して羨ましくなる事だってある程だ。まあ二人が楽しそうならそれで良いんだけどな、そう思って俺の仕事である薪運びを再開しようとすると料理をしているだろう方向からがしゃんと派手な音が聞こえてきて思わず薪を二、三本落としてしまった。魔物でも襲ってきたのかと慌てて振り向くと焦った様子でしゃがむゼロスと見事なまでに地面と仲良しになっているコレットの姿が目に入った。どうやらまた彼女の得意技である派手なドジを発揮したらしい。調理器具や野菜、卵が割れたのだろう白い残骸が地面に散らばって結構な事態となっている。あーあ、また豪快にやったなあと苦笑してゼロスに起き上がらせて貰っているコレットの元に行き「大丈夫か?」と髪の毛についた土を払ってやった。折角綺麗なブロンドなのに埃まみれだ、勿体無い。

「ありがとロイド、私はだいじょぶだよ。でも卵割れちゃった…、ごめんねゼロス、オムライス作る予定だったのに…」

「良いってことよコレットちゃん。ほら、可愛い顔が台無しだ」

そう言ってコレットの顔についた土を自分の手で拭うゼロスはいつのもナンパな態度は何処へやら、見事なまでのお兄ちゃんぶりを披露した。いつのこうなら俺だってゼロスの事兄貴みたいに尊敬するのに、これも勿体無いな、何て勿体無い病に駆られそうなのを抑えて地面に広がっているものを集め水を掛けて汚れを落としていく。実は結構腹ペコだったりするので早く食事に有り付きたかったりするのだ。新しい技を覚えたくてやたらと戦闘しまくったのが間違いだったのかもしれない、しかも何も覚えられなかったし。「なーロイドくーん」陽気な声で呼ばれて野菜を洗う手をそのままに「んー?」と返事をすると今日のご飯何が良いー?との質問。ジーニアスやリーガルには劣るもののゼロスの料理は結構上手いしコレットだって大きなミスをしなければ下手と言う訳ではない、だから二人の作るものなら何でも良かったりするのだが折角リクエストを聞いてくれるのならとビーフカレーが良いと答えた。ビーフ、と言う所がポイントだ。普通のカレーじゃなくて、ビーフ、カレー。肉、肉!

ロイドってば本当お肉好きだね、そう言って微笑むコレットとそれにつられて笑うゼロスに何だか自分が酷く子供に思えて恥ずかしくなり「良いだろ、別に」とぶっきらぼうな返事をしてみたけれど、二人は全く気にした様子も無く「じゃあ肉好きのロイドくんの為に今夜はビーフカレーにしようか」と今日の朝手に入れたばかりの肉を取り出して切り始める。隣でコレットも「美味しく出来ると良いね」と鍋を火に掛けゼロスよりも少し危なっかしい手付きで野菜を切り始めた。微妙に居た堪れない、俺、何かちょっと置いて行かれて無いか?二人だけ意思疎通完璧って感じで何か悔しい。俺だって二人の事好きなのにさ、ズルイよな、除け者にして。ちょっと不貞腐れた俺はもう良いよ薪運びするからと元いた場所に戻ろうとするけれど「何処行くんだロイドくん」と不思議そうな声で呼び止められてしまった。何処行くんだ、って、薪運び、途中だから、続きするんだよ、不機嫌丸出しの子供ぽい返事になってしまい慌てて言い直そうとするけれどそれはバッチリに聞かれてしまい二人はいそいそと準備をしていた手を止めて俺の方に寄ってきた。そこまでお揃いなのかと言いたくなるほどに良く似た青く透き通った4つの瞳にじっと見つめられて少し緊張してしまう。「やっぱり食材駄目にしちゃった事怒ってる…?そうだよね、ごめんねロイド」と全くもって見当外れの事を言ってまた落ち込みだすコレットと「子供扱いしたのにムカついてんのか?がきんちょみたいだなロイドくん」とまあ的を得ていない事もないけれど微妙に馬鹿にしてくるゼロス。

それを見ているとムキになる自分が馬鹿らしく思えてはあ、と一度溜め息をつき「怒って無いよ。何かちょっと寂しかっただけだから」と言うと二人はぱちぱちと瞬きをして顔を見合わせ、くすくすと笑い始めた。な、何だよ、笑わなくてもいいだろ!俺、結構本気で言ったんだからな!そう言って抗議すれば、ごめんねロイド、ふふ、と全然謝る気の無いだろうコレットの楽しげな声が返ってきた。ゼロスに至っては笑いを堪えるのに必死な様子だ。また二人して笑って除け者にする!何だよもう!また不貞腐れそうになるのを必死に抑えてゼロスのアホ、とせめてもの仕返しをする。何で俺さまだけなのよ、と言いながら俺の頭に手を置いてぐりぐりと撫でてくるものだから俺の髪はすっかりぐしゃぐしゃだ。

「ロイドくんてば、本っ当、鈍感だよな。ちっとも気付きやしねえの。なあコレットちゃん」

「ねー。でも、私、そんな所がロイドらしいと思うよ」

それもそうかとまた笑って、コレットとゼロスは何を思ったのか二人して俺の腕に抱きついてきてその状況について行けない俺を他所に耳元で同時に囁いてきた。大好き、ロイド、と。
今日のビーフカレー、ロイドだけお肉多くしてあげようと思ってるのに寂しいなんて、ロイドはやっぱり鈍感さんだね。俺とコレットちゃんほどロイドくんを贔屓してあげてる奴、俺さま他にいないと思うけどなあ。鈍感も度を超すと考えものだぜハニー?

大好きだよ、そう言われて、俺は何故か泣きそうになった。嬉しくて堪らない、だって、俺もちゃんと二人の中に入れたんだって分かったから、嬉しい、すげえ、嬉しいや。今日のビーフカレーはきっと今までで一番美味しいに違いない、だってこんなにも幸せな気分なのだから。涙が零れそうになるのを必死に抑えて「俺も大好きだからな!」と満面の笑みを浮かべた。


thanks! ハーケンクロイツ




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