tales | ナノ

「はいロイドくんあーん」

「やっ、やめろよ恥ずかしい!」

えー別に良いじゃん、ほら早くしねえと折角の料理が冷めちまうぜ。たくしょうがねーなー、ゼロス、お前もちゃんと食べろよ。分かってるってば、ハニーは優しいねえ。いちゃいちゃいちゃ。「…………」時間は朝。場所は食堂。この時間に食堂に来る目的の9割は朝食が目当ての奴であり、俺ルークも例外に漏れず上手い朝食にありつこうとやってきた一人である。そして遭遇したのがこの光景。朝一番にこんなベタベタラブラブとされたら飯食う前に色々と腹一杯になっちまうっての。俺と同じタイミングで食堂に来たクロエとクレスも目の前の状況に呆れているのか困っているのかぽかんとしている。クロエに至っては恥ずかしいのか視線をうろうろと泳がせている始末だ、可哀想に。食堂の中でも自分の食事よりも2人の事が目に留まる奴が多いらしく何人かのスプーンからスープがぽとぽと零れている。これだけ注目を集めておいて本人達は何も思わないのだろうか。

その何とも言えない空気を無視してロイドとゼロスの名前を呼んだのは納得と言うか何と言うかジェイドだった。どうやら今日の依頼をまだ受けていない2人に任務を持ってきたらしい。ロイドはそれを素直に受け取り礼まで言っているがゼロスは折角休みになりそうだったのを邪魔された事が不服らしくジェイドに文句を言っている。本当に相性の悪い2人だ。ともあれこれでのんびり飯が食えるなとクロエとクレスに話しかければそうだなと返ってくる目でのやり取り。2人の他にもルカとキールがジェイドに呼ばれている所を見るとどうやらロイドとゼロス、ルカとキールで任務に行くらしい。頑張れ2人とも、俺は大人しく飯にありつくとするよ。

「なーんでこんな土臭い事俺さまがしなくちゃなんないのー」

「レッドセージ採取が依頼なんだから仕方ないだろ。それとも、ばしばし魔物倒していく依頼の方が良かったか?」

それは嫌だけどさーはあ…20枚って…はあー。大変なのは皆一緒なんだから頑張ろうぜ。ロイドくんにそう言われると俺さま弱いんだってばもう。はは、だから言ったんだよ。何それ怖い。「…………」時間は昼。場所は粘菌の巣。ジェイド伝いでチャットから任せられた依頼はレッドセージを20枚集めろと言う魔物退治などに比べれば比較的楽な依頼。しかしメンバーを考えると精神的に辛いものがある。僕とルカの存在を忘れているのではと思う程自然に、決して自然では無い会話をしているロイドとゼロス。僕達の方が怖いとつっこんでやりたい。隣で作業をしていたルカが細い木の枝を使って地面に「居辛いよ」と率直に自分の気持ちを書いた。「そんなの僕も同じだ」「早く任務終わらそう。何枚集めた?」「まだ5枚だ」「僕なんて3枚だよ…」「この分だとまだ時間が掛かりそうだな」「あの2人の進み具合にもよるけど…」そこまで書き合って僕達はちらりと二人に視線を向ける。

するとロイドがそれに気付き「二人とも変な顔してどうしたんだ?レッドセージなら順調に集まってるから心配しなくて良いぞ」とまるで心を読んでいるかのようにほら、と、十数枚のレッドセージの束を見せてきた。何だかんだで仕事は早いのか、いやそうじゃなくて。「ねえ、僕達の分合わせたらもう20枚あるんじゃない…?」そうだ、それだ。慌てて僕たちが集めた8枚をロイドに渡すと見事20枚きっちりになった。まあつまりは任務完了。「えっと…お疲れ様」本当にお疲れ、僕達。

「右ガラ空きよロイドくんっ。魔神剣!」

「おっと…粋護陣!へへ、やるなゼロス!」

見くびって貰ったら困るぜハニー。俺さまの強さはこんなもんじゃないって知ってるでしょー!そうだな、ゼロスは強いよ。でも俺も負けないからな!望むところよ!よし、まだまだ行くぜ!「…………」時間は夕方。場所は甲板。洗濯物を取り込もうとやってきた当番の私とアーチェとリアラは思わずその光景にすごく驚いてしまいました。修行をしているのだろうと言う事は分かったけれど、ロイドはともかくゼロスが自ら修行に打ち込んでいるのがとても珍しかったからです。「珍しいこともあるものね」とリアラが私の心を代弁するかの様に言葉を零したので「今日はそう言う気分だったんでしょうか」と同調しながら返事をする。するとアーチェがくすりと笑い「ロイドのお願いだからに決まってるじゃん」と当然の様に言い切った。でもそれだけでああそうかと納得してしまう。だって、こうして外から見ていてもゼロスは本当にロイドが大好きだと伝わってくるから。そして、ロイドも。

でも…その…「ねー2人とも!修行中悪いんだけど、洗濯物取りこみたいからどいててくれない?」わわ、アーチェはすっぱりとものが言えてすごいです。私はどうしても2人の間に割って入る事が出来ません。何と言いますか、折角幸せそうなのに申し訳なく思ってしまって…。ぽん、と私の背中を優しくリアラが触れて「気にする事無いわエステル。あの2人ったら、放っておいたらずっとあのままなんだから」と少し困った様に微笑んだ。アーチェの呼びかけに修行を止めた2人は少し疲れた顔をしながらも楽しそうに今の修行について話し合いながら私達の元へ来た。「今日の当番は女の子だけ?手伝わなくても大丈夫かい?」と気遣ってくれるゼロスに「大丈夫です」と返事をすれば「そう、じゃあ無理しないでね」とまたロイドと笑い合いながら船内に戻って行く。ふふ、本当にお似合いの2人です。

「ロイドくーん、背中流してあげるー」

「サンキューゼロス。じゃあ頼むぜ」

てか体に傷増えてない?気を付けろよロイドくん。そんなに無茶してないんだけどなー、まあ気を付けるよ。あんまり怪我すると俺さま泣いちゃうからね。それは嫌だからほどほどにする。「…………」時間は夜。場所は浴室。どこの新婚だと言いたくなるようなその会話に思わず耳を塞ぎたくなる。ここは公共の場であって他の奴にもそれなりに気を使って使用するのがマナーと言うものだ。それなのにこいつらときたら2人だけの世界にいるかのような雰囲気。どうしてくれようか。「リオン、そんなに怖い顔するな。今に始まった事じゃないだろう」急に話しかけてたヴェイグは諦めたような表情でそう言った。確かにあいつ等の度を越したやり取りは今に始まった事では無い。しかし、だからこそ我慢の限界と言うものがある!

「はー気持ち良いー」と暢気に湯船に浸かるロイドとゼロスを呼び僕は「お前等は所構わずベタベタと、…いい加減にしろ!こっちの身にもなってみろ!」と怒鳴ってやった。少しは懲りるかと思いきやロイドは怒るわけでも悲しむわけでも無くけろりと笑い「悪いな、俺、ゼロス好きだから我慢とか出来ないんだ」とさらりと言い切ったのだ。流石にゼロスも驚いたらしく顔を赤面させ「ロイドくんてば直球すぎだって!」と動揺し始める。勿論周りにいた奴等はそれ以上に動揺して硬直してしまった。それを気に留める事無くゼロスの腕を引き浴槽から出たロイドは「じゃあ皆、また明日!」と嫌に爽やかな挨拶を残して浴室からでていく。「あいつ等に何を言っても無駄だ、諦めろ」そのヴェイグの言葉に僕はただ黙り込む事しか出来ないのであった。

ロイド・アーヴィングとゼロス・ワイルダーは、バンエルティア号公認の馬鹿ップルである。

thanks! wizzy



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