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土曜日に、原田と藤堂、雪村は駅で待ち合わせをして、井吹が賞を取ったとされる美術館に行く事になった。
「左之さーん」 時計のモニュメント前にジーンズのパンツに着崩れた黒いシャツ姿の原田を見つけ、藤堂が原田と合流する。 「平助、千鶴と総司は?」 「総司は誘ったけど来ないって千鶴は来るって言ってたけど、ちょっと遅れるって言ってた。」 「そうか。」 原田が時計を見て時間を確認した。 藤堂はふと視線を感じて、視線を追うと、たまたま居合わせた女性が原田を見ていた。 (相変わらず、左之さんモテるよな…) 藤堂はため息をつく。 「あった早々溜め息とはご挨拶だな。」 「別に…」 「何だ、総司になんかされたか?」 「あ!左之さん、一君の事何か分かった?」 原田は肩を竦める。 「そっか…。」 藤堂は肩を落とす。 「その話に関連するわけじゃねえが、龍之介はあの時代の記憶が無い。」 「え?」 「だから、そっとしといてやれ。」 原田の言葉に藤堂は俯く。 「一君も、もしかしたら記憶が無いままなのかな…」 「今のこの状況じゃ何とも言いようがないのは確かだな。」 「なんつうか・・最近、総司見てると「扱いに困るか?」」 割り込んで来た原田の言葉に、複雑になる。 「剣のことで一君を探す気持ちは分かるだけど。一君の話をしただけで最近は殺伐としてるから居心地悪くて。」 「彼奴の場合、斎藤の腕っぷしだけとは限らない気がするがな。」 原田は小さく呟いた。 「え?」 「excusez-moi(失礼) Je veux aller aux tourniquets de sortie nord (私は北口改札口に行きたい) 」 突然、ブロンド色の髪の女性に声を掛けられ藤堂は戸惑い。 原田が流暢な英語で対応した。 「平助君、ごめん遅れて来ちゃって。」 息をきらせながら、パーカーとジーンズ姿の藤堂を見つけ、雪村が合流した。 「原田先生は?」 藤堂は親指を立て背後を指さす。 雪村は納得の表情。 「もてる男は、ツライよな…」 と拗ねた表情、雪村は困った表情をしながら笑っていた。 原田は外国人の対応を終え、藤堂達の元に戻る。 「千鶴、そのワンピース可愛いな…よく似合ってるよ。」 と原田は笑う。 雪村は頬を赤く染めた。 「ありがとう…ございます。」 藤堂はムスとして 「左之さんナンパの対応お疲れ様」 原田は目を見開いた後、 「俺なんか、まだ小物だ。土方さんには負ける。」 藤堂と雪村は苦笑いした。
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