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「そうだが。」

「じゃ器用だね。」

「!?
左利きが器用か?と言われたらそうではないと思うが。」

「そう?」

「不器用だからこそ俺は左利きなんだと思っている。」

相手は差し出した俺の右手を撫でる。

「君、指を使った運動とかする?」

「・・・」

「まずいこと聞いた?」

「あ…いや。思いもよらないことをきかれたから。
居合いなら・・・」

「居合い?」

「あぁ」

握った手を離す。

「そっか…。
名前教えて貰って悪いだけど。僕自分のこともわからなければ、自分の名前もわからないよ」

俺は自分の事も解らないのに、第三者の指を触れて運動して居る事を見ぬいた事に純粋に不思議に思った。

「胴着の左前合わせの裾か袴の後ろ右側、腰板に刺繍されてないか?」

「!?」

相手は急いで胴着を急々と確認したが書かれて居なかった様で、がっかりしている。

「袴は?」

「見てくれる?」

俺に背中を向けて、袴紐を緩める。
俺は腰板を見ると【総司】と言う文字をみつけた。


土に落ちていた枝で「総司」と書く。



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