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「糸目の癖に!糸目の癖に何で格好良いんだ!」
「自分雰囲気かわいいやもんな、かわいいやないもんな、雰囲気が≠ゥわいいだけもんな」
「うっぜええええ!」
ある日曜日。
部活してるって顔を出しに行ったらこれだ。
昼休憩を狙ったのは話がしたかったわけで、確かにこの言い合いは好きなんだけど。
うっざい!
「違うん?ならアイプチとってみ?」
「やだ!」
アイプチとったら死ぬ!あれないと生きていけない!
先輩――――桐皇学園のバスケ部主将の今吉先輩は自分の目元を指差してにたりと笑う。
あー嫌な笑顔ったらない。
「ほら雰囲気かわいいだけで顔ブスやん」
「顔良いだけで性格悪い先輩には言われたくないですけどー!」
「その先輩になついてんの誰や」
「私だよ!」
「うわ、ネタ古」
「嵌めやがったな!!」
いつのネタだよ!私小学生だったわ!
ひとしきり笑った先輩は持っていたボールを指先で回す。
流し目で、私を見るからどきっとしてしまった。
なんだそれ、顔が良いの自覚してこんなことしてくるから性格が悪いんだ。この人は、本当にもう。
「バスケ、見ていくやろ」
「…」
「バスケ、好きやもんなあ?」
「…!見るし!見てやるし!バスケ大好きだわ!」
開き直ってそう叫ぶと、先輩はけたけたと笑って私が手に持っている保冷バックを指差した。
「それ、差し入れ?」
「ゼリー」
「手作り?」
「当たり前」
ちゃんと保冷剤も入れてきた。
食べる頃にはちょうど良いくらいにシャリシャリなはず。
「ほな、頑張って練習してくるわ」
ひら、と手を振りつつ、糸目みたいな目を開くからその目に射抜かれて動けなくなる。
くっそ、悔しい…!
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