「はぁあぁ……」
ベッドに一人腰掛け、頭を抱えて大きなため息をつく。
「くそっ」
ガンッ!
シーツを適当に身に纏ったまま何となく目についたゴミ箱に当たる。軟弱なつくりのそれは簡単に吹っ飛ばされ、辺りにゴミをばらまく。それを見ていたら、余計にイライラした。
「……まさか、」
まさかあいつが、あんなことを言う奴だとは思わなかった。
失望はしていない。酷く驚いただけだ。
ベッドに倒されたときの、あの鋭い目―――なんていうか――そう、
綺麗、だった。
「――オレの負けか」
思ってみれば、ゲームは始まる前から終わっていたのかもしれない。ただ単にオレが認めたくなかっただけで。
「あーあ。このオレ様がゲイねェ……」
ベッドに身を倒しながら、途方に暮れた顔をしてみる。身体は思ったより軽かった。血の巡りを感じながら数秒間、目を閉じる。目を開けたら、世界ががらりと変わった気がした。
「さて――ルカのやつを連れてこねーと」
ルカの服はこの部屋の中。ジーンズだけで上に何も来ていなければ、あのもやしっ子は設備の整ったこの屋敷でも風邪を引いてしまうだろう。きっとあのヘタレのことだ、半裸で歩き回る度胸もないので、二つ隣の便所にでも籠って絶望しているんだろうが。――いや、泣いちまってるかな。
「って――親かオレは」
自分の気持ち悪さに嫌悪しながらも、脱ぎ散らかした服を適当に着たオレは部屋の鍵を開ける。扉を開くと、少しばかり昇ってきた太陽がオレを照らした。
早朝の空気を吸って、先刻のルカの言葉を思い出しながらオレは、冷たいタイルの上を歩きだした。
「ねえ、スパーダ……」
愛してるよ。
END
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