「は……、ッ…」
「………ッん…」

オレの挑発にルカは易々と乗ってきた。まずは何をするのかと出方を窺ってみれば、やはり無難なキスから始めてきた。

舌の裏を舌でつついてみたり、歯列をなぞってみたり。良さそうな所を、おずおずとだが一生懸命に探しているのが分かる。


それにしても…、



「……んっ、う」
「………。」



長い。かなり長い。もうかれこれ20分はしている気がする。

「……ん、…ッスパーダ、」

つーかこの様子だと、こいつの方が感じてるんじゃねーか?

「……」
ぎりっ
「!!い、痛い!いひゃひゃ!!」

いい加減痺れを切らしたオレは、弛んでいたルカの腕による右手の戒めを解いて奴の頬をつねった。

「な…なにすんの!」
「……はあ、もういい」

もう面倒だ。そう思ったオレは、ルカを蹴落として誰もいない自分用の借り部屋に戻ろうとする。


「――分かった」
「は?」

相手の脇腹辺りからするりと抜け出してやるつもりだったのに、突然妙に冷めた声で言い出すから思わず目線を戻してしまった。

だが見つめた先にはもうルカはおらず、世界が圧力に負けて傾ぐ。

「ぐ……ッ!」

首筋に舌が這う。抵抗しようともがくが、手足はルカの全体重をもってベッドに縫いつけられ動かせない。

「……」
「ルカ、やめ…あっ」

首筋を通って鎖骨へ、体の線を辿るように艶かしく舌が流れていく。

服を両手で丁寧に脱がされ、纏うものは何一つなくなる。露になった乳首を待ち焦がれていたように、ルカは右手でそれを摘まみ、左手でオレの頬を撫で、深く口づけた。

「ん……ふっ、あ」
「ねえ、スパーダ……」

溢れた唾液が口の端から喉仏を伝い、シーツにおちる。それがオレの意識を鮮明にさせ、良く通るルカの声が、いつにも増して響いて聞こえた。


「―――――」


「!」
ドカッ
「ぎゃっ!」

ルカを蹴ると、猫が尻尾を踏まれたような声を出してベッドから転げ落ちた。オレは全裸のまま驚きに硬直している半裸のそいつを部屋の外へ追い出し、二度と戻ってこないよう鍵を閉める。扉に耳を当ててみるが流石にもう何か言ってくることはないようで、部屋は再び正常な静けさに包まれた。


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