「あ、はぁ、工藤、もう無理ッ…」
身体中が熱い。下腹部を中心に快楽が沸き立ち、平次は涙を流しながら絶頂を懇願した。

「くどぉっ…あ、んんっ、もうイク…ッ」
「服部、その顔反則ッ…!」
激しい締め付けを感じた工藤は最後の抵抗とばかりにギリギリまで腰を引き、極限まで深く突き上げた。

「ひッ、ああああァ!!」
「んっ、アッ…!」

激しい官能に身体中を痙攣させ、欲を吐き出す。肉壁はうち震え絡み付き、新一も己の欲を解放させた。

「あ…あっ、た、かい…」

自分の中で脈打つ怒張。それはあまりにも命の輝きに満ちていて、平次は多少の罪悪感を覚えた。なんとなく切ない気分になったので、すがりつくように抱き締める腕に力を込めると、新一もまた、残酷過ぎるような微笑でそれに応えるのだった。


*****


余韻後引く部屋で、一糸纏わぬ男子高校生二人が寛いでいる。なんとも言えぬシュールな光景だ。

「腰、大丈夫か?」

新一は相手の様子を窺いながらそれとなく尋ねた。
「ん?ふふふ、平気や」

「んだよオメー、気持ち悪ィな」
「ひひひひ…いてっ」

心配して損したと誰もが後悔する無邪気な笑みに下された粛清。先刻の情事など微塵も感じさせない通常運行の二人であった。

「あー、…工藤」

「…なんだよ」
「あんな…」

呼び掛けと同時にちょいちょい、と手招きをする。怪訝な顔で近づく新一に、平次はそっと耳打ちをした。

「好きやで、“新一”」
「!?」

しまった、と思ったときには既に遅かった。冷静な対応など最早できるわけもなく、新一は後方に飛び退いたままベッドの縁から転げ落ちた。

「あっはっはっは!まんまとかかったわ!!」

歯切れの良い笑い声が響く。新一は腹立たしげに顔を歪め、ピクピクと目元を痙攣させた。

「あーあ、簡単なことやったんやなあ」
溜め息が呟きに変わる。
「何がだよ?」
気分をそのまま口調に表し、新一は尋ねた。

「冬が終わると?」
「はあ?」

それはあまりにも未熟な設問であった。
「冬が終わると、何が来る?」

平次は至って冷静に問いを繰り返した。関西特有の口振りが、彼の一随な表情には似つかない剽軽さを生み出している。

「春だろ」
新一は強張った顔で答えた。

「それ」
「あ?」
「それとおんなじや、俺らも」
「はああ?」

尚更分からない、理解できないという顔をしている。平次はちょっとした優越感に駆られた。

「やっぱ好きやなー工藤」

そういって抱き締める。ナンダコイツ、と頬を染める新一も、結局はドツボに嵌まってるんだと思えばまた笑みが零れた。

「ありがとうな…工藤」

耳元で囁く。新一の暖かな背中が、平次の涙腺を甘く融かした。

はじめから言えばよかったのだ。そうすれば、互いにボロ雑巾のようになる必要は無かったのだから。

でも、余りにも若すぎた。幼すぎた。

二文字の禁忌が平次の口を飛び出さんとする度、それは鉛のような冷たい重みを纏って、喉奥へと沈んでいった。

「でも、…結果オーライやな」
こんなにも幸せなのだから。だから今、自分は涙を堪えられずにいる。

「喉元過ぎればなんとやら、ってな」

困ったような顔で、平次は宣う。窓越しには少し早めの春が、我よ我よと忙しなく訪れを祝し、風は打ち寄せる小波のように、強かな身体に染み渡っていた。

好きだと伝えて良かった―――

恥ずかしいくらいの甘い風を感じながら、二人は同じ言霊を重ねるのだった。


END



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