息が苦しくなって、唇を離す。目の前には、その蒼白い肌を桃色に染め上げた姿があった。

と、その瞬間脳裏に蘇る残像。

それは、何もかもが終焉を迎えようとしていたとき。僕とスパーダが創世力を使う直前の記憶だった。

『お前は本当、サイコーのダチだよ!!』

そうか。創世力の眩い光の中で聞こえてきたあの言葉は、

僕の囁いた言葉とは、
色も形も違ったモノだったんだ。

ぎゅう。

抱き締める。彼の身がちぎれるくらい強く。風も吹いていない密室なのに、何だかとても寒くて。僕の方がちぎれてしまいそうだった。

「ごめんね…」

「あ…?」

とろけた顔が僕を見つめる。肘だけで起き上がらせた自分の身体は重くて、とても持ち上げられたものじゃない。でもなるだけスパーダの顔を見下ろしたくて、身体中の血液を集めるつもりで腕を奮い立たせた。

「僕、……ワガママだよね…」

この隔たりのある不平等な世界で、僕は彼から最高の言葉を貰ったけれど――

それでも、先を求めてしまうだなんて。

どす黒い感情が、冷たい身体の底へ沈んでいく。

「スパーダ、好きになってごめんね…」

素直な気持ちを囁くと、彼は僕の肩に吐息をかける。

「馬ァ鹿………謝んなって言ってんだろーが」

「うん………」

唇からスパーダの熱が身体中に広がって、指の先から溶けるように暖められていく。人間の身体はこんなに暖かいのかと、不本意だけど感心した。

寝床を軋ませて、身体を離す。相手の目を見つめ上げ、眠りに落ちるような柔らかさで僕は呟いた。

「……謝ってしまう癖、なかなか治らないかも。……ごめんね?」

怒られるかなあ、と思いきや。

「でも、それがお前だろ」

他の誰でもない、お前自信だ、と。

「……!」

認めてくれた。受け入れてくれた。

これ以上ない言葉を、くれた。

「そうだろ?」

「っ、…うん!」
視界が霞む。呼吸も忘れるような素敵なそれを、少しでも長く見つめていたくて、目を何度も瞬かせた。
「どうだ!幸せだろ?オレに口説かれて」

「うん……本当に。」

幸せだ、幸せだよ。君のおかげで。



だから僕は、君の苦手な言葉をいうよ。

「ありがとう」

「!―――、何だよ、それ」

微笑みあって、もう一度唇を重ねた。心臓が潰れるような錯覚を覚えたけれど、そんな感情さえもうどうでも良くなった。

END?


〜おまけ〜
「ああそういえば、飲んでなかったね」
「ん?――ああ、アップルティーな」
「うちの店でも取り寄せているんだ、とっても美味しいんだよ」
「へー……あ、でも冷めたら不味いんじゃねェ?」
「一応お湯で温めたカップに入れたんだけど……どうかな」

ごくん。「……」
「どうだ?」

「まだ、温かい……」
「マジで?結構冷めねェもんだな」
「うん、冷めないね……ふふ」
「ルカお前……ちょっとキモいぞ」
「スパーダも飲む?」
「あ、ちょ、何し…ッ」

ごくん。

「……っ」
「暖かいでしょ?」

溶けてしまうくらい。

END!



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