かぽーん…
風呂場はとても広かった。
だが人っ子一人おらず、風呂桶の響く音がやけに大きく聞こえた。
ザバババー
大樽に貯められた水で頭を流す。
武はふう、と溜め息をついた。
一目惚れ……だった。
艶のある黒髪に、整った顔立ち。
身長は…自分より低いのだが。
それでも…美しかった。
相手は男なのに…
このご時世に同性愛は良くあることだ。
だが、旅の僧は恋をしてはならない。
第一、あいつは……―――
そんなことを考えながら、風呂に入る。
丁度良い温度。
武が入ると、風呂のお湯は溢れる直前までに増えた。
それを見ていたら
また、溜め息が零れた。
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