「……っ」
声も出せず、山本は俯せに倒れた。
運良く、敵からは逃れられたようだ。
だが心臓に、鈍い痛みが走る。
(撃たれたのは心臓か…)
撃たれた心臓の鼓動とは裏腹に、頭はとても冴えていた。
(まいったなぁ…あいつの忠告、聞いてればよかった…)
かふっ、と血混じりの溜め息をつく。
もう、生きて帰る事はできないだろう。
(あぁ…)
目が、自然と空を仰いだ。
夜の闇を白みがかった雲が覆い、絶妙な極彩色を生み出している。
意識が朦朧としてきた。
山本は、最後の力を振り絞ってポケットから何かを取り出した。
「ひ…ば……り」
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