「ちょっと」
「…んあ?」
ふと気づいてみれば、いつの間にかリボーンの姿がなくなっていた。そのかわり、リボーンの座っていた石に雲雀が座っている。
「あ…ヒバリ…?」
雲雀は、腕を組んでさも当然のように睨みを利かせてきた。
「いつまで寝てるのさ」
彼の言う通り、辺りはすっかり日が暮れていた。空は闇色に染まり、だらしない顔で見上げる山本を抱き込み、そのままどこかへ連れ去ってしまいそうな静けさだった。
空から目が離せなくなりそうになって、山本は雲雀を見つめた。
彼は相変わらず何を考えているか分からない顔で、いつの間にかくべられていた焚き火を見つめるともなく見つめている。
冷えてきた風を紛らすように、相手が怒らない程度の質問を考えてみた。
「カレーは?」
「食べた」
「ハハ、ヒバリとディーノさんは突撃参加だから、皿足りなかったろ?誰かから借りたのか?」
雲雀は、何も答えなかった。珍しく質問に答えてくれた雲雀に対して、無意識に浮かれ地雷を踏んでしまったのかもしれない。
「…ハハ」
ごまかすように笑ってはみたが、雲雀が動く様子はない。何かを待つように、その黒い瞳で闇の一点を貫いていた。
それきり、何も話さなかった。だが、二人を取り巻く空気は決して悪くはなかった。
近いのに
遠い。
脳が落ち着かないと思っても、身体の暖かい所が悪くないと言う。
隣の存在が怖い。
でも触れたい。
そんな柔らかくも張りつめた空気に、互いがどうしようもなく動揺していたのであった。
それから二人はまた少しだけ話をした、といっても山本の話が9割を占めているのだが。
「ヒバリ」
「何?」
「…お前が来てくれて、良かったぜ…!」
―会いたかった―
本当の思いを胸に、山本は目を閉じた。すると瞼の先に光る微かな星が、ちらちらと見えた気がした。
雲雀こそ何も言わなかったものの、山本が目を閉じるのを横目で見届けては、自分も瞳を閉じたのであった。
Ver.1 END- 115 -
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