またな、ヒバリーー
平静を装い、手を上げながら立ち去ろうとした山本を、雲雀は気難しく口元を歪め、じっと睨んでいる。
「な、なんだよ…」
視線を痛く感じたのか、山本は振り返る。
雲雀は暫く何も言わなかったが、考えたような素振りを見せた後、何を思ったか、大股で山本に近づいていく。
スッーー
白い手が伸び、山本に近づく。山本は無意識に眉を潜め、強く目を閉じた。
くいっ
「あ……?」
不意に顎を掴まれ、雲雀の予想外の行動に驚き、目を開く。それと同時に、世界が雲雀で埋められた。
一瞬の出来事だった。
雲雀は掴んでいた顎を離すと、小さく言った。
「…お礼」
相変わらずの仏頂面だった。それでも少し頬が赤く染まっていたことが、山本には堪らなく愛しいのであった。
END
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