「いいかい、一度しか言わないよ」
収録直前になって、やっと雲雀は振り付けを山本に教える。
「ここで足をビュンと…」
「…こうか?」
「違う。…ここでビュン」
「ここでバッ、ここで…」
山本的表現は雲雀にも活用されていた。
効果音でのコミュニケーションは、二人にしか伝わらない。
ビュン…
「フン…今のはまずまずだね」
「ハハ!マジで?」
そう言いつつ心の中でガッツポーズ。
このやりとりは、数回繰り返された。
「よし…出来たッ!!」
山本が笑顔でガッツポーズを浮かべる。
「そこまで言うなら、完璧に出来るんだろうね?」
雲雀が意地悪そうに微笑む。
微笑みというより一種の脅しであった。
「出来なきゃ殺す」と言う、殺意に似たそれ。
「あはは…た、多分…」
「多分?僕を前に妥協かい?咬み殺す」
ジャキッ
トンファーを握る雲雀。
「す…スンマセンッ!!」
山本が冷や汗を流して構える。
「と…撮りますよ!!」
慌てて草壁が止めに入る。
と言っても、そのまま止めては自分が殺されてしまう。
最善の言い訳を考えて、的確に突く草壁は、最高のストッパーであった。- 95 -
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