「いいかい、一度しか言わないよ」


収録直前になって、やっと雲雀は振り付けを山本に教える。


「ここで足をビュンと…」

「…こうか?」

「違う。…ここでビュン」

「ここでバッ、ここで…」

山本的表現は雲雀にも活用されていた。

効果音でのコミュニケーションは、二人にしか伝わらない。


ビュン…

「フン…今のはまずまずだね」


「ハハ!マジで?」

そう言いつつ心の中でガッツポーズ。


このやりとりは、数回繰り返された。


「よし…出来たッ!!」


山本が笑顔でガッツポーズを浮かべる。


「そこまで言うなら、完璧に出来るんだろうね?」

雲雀が意地悪そうに微笑む。

微笑みというより一種の脅しであった。

「出来なきゃ殺す」と言う、殺意に似たそれ。


「あはは…た、多分…」

「多分?僕を前に妥協かい?咬み殺す」

ジャキッ

トンファーを握る雲雀。

「す…スンマセンッ!!」

山本が冷や汗を流して構える。

「と…撮りますよ!!」

慌てて草壁が止めに入る。

と言っても、そのまま止めては自分が殺されてしまう。


最善の言い訳を考えて、的確に突く草壁は、最高のストッパーであった。


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