「……武?」

ふと、音が消えた気がして、思わず名を呼んでいた。


だが、返事はなかった。


「…?」

魚を捌く手を止めて、和室へ歩み寄る。

血の匂いはまだ残っていたが、そんなことは気にもとめなかった。


畳に仰向けになっている武。


情事の後、一人暗闇で着替えたのだろう。

青い衣をその身に纏って。


「……」

雲雀は無言で武の頬を触る。


日焼けで黒みがかった肌は、近くで見るときめ細やかで、滑らかだ。


だが今はただ触れた相手に、黙って命の終わりを告げている。



- 88 -





Top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
back