「……武?」
ふと、音が消えた気がして、思わず名を呼んでいた。
だが、返事はなかった。
「…?」
魚を捌く手を止めて、和室へ歩み寄る。
血の匂いはまだ残っていたが、そんなことは気にもとめなかった。
畳に仰向けになっている武。
情事の後、一人暗闇で着替えたのだろう。
青い衣をその身に纏って。
「……」
雲雀は無言で武の頬を触る。
日焼けで黒みがかった肌は、近くで見るときめ細やかで、滑らかだ。
だが今はただ触れた相手に、黙って命の終わりを告げている。
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