「はっ…!!」
雲雀は上半身だけを起こした。
ふと首を横に向けると、武の姿がある。
「はあ…」
夢に殺意を感じながらも、雲雀は寝顔を見つめた。
「お腹空いた…」
人喰い妖怪の雲雀は、人を食べなければ生きていけない。
生き血や臓物よりも、人間の魂を喰らうことで生き延びることができるようだ。
ここ何十年と、雲雀は何も食べてはいなかった。
「そろそろ…かな…」
誰にも聞こえないよう小さな声で呟き、ゆっくりと立ち上がった。
ふらふらと台所に向かい、小魚数匹をまな板の上に乗せる。
「ごめんね…本当は君にこれをあげたかった。」
まるで亡き者に告げるように呟くと、包丁を掴み、小魚を捌く。
「良い手つきだな!!」
「!!」
誰かにそう言われた気がして、思わず振り返る。
だが、そこには誰の姿もなかった。
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