7-4 | ナノ








きっと人間は誰でも多重人格者だと思う。
だって性格がいくつもなきゃこの理不尽な世の中、生きていけるわけがない。
どこにでも笑顔を振り撒いて、自分を制して、なんて。
そんな戯れ事実行できるわけがない。

そして自分の場合、俺の中にはオレがいて、きっと少なからず僕もいるんだろう。

僕は遥か遠い昔に使われたから今はお休み中。
でもオレは、俺のあとに生まれた人格で、今も俺の中で生きていて、月子を想う狂った獣のような人格。感情を持った狂った獣。
何せオレは時折出て来ては月子の唇を身体を心を、何の容赦もなく奪っていく。
もう既に自分の手の内に彼女はいるのに、離れていかないように、もっと傍にいるように、首輪をつけて、目隠しをして、他人に縋ることがないように、自分だけに縋るように……。



そんな乱暴な真似をするのはどうしてだろう。
だれかを想うということはそのだれかを守りたい、と思うからだろう?
それなのに守りたいと思うのに乱暴に扱うなんて、まるで矛と盾。
中学で習ったあの漢文のように馬鹿な話だ。

俺だって月子を想ってはいるけど、そんな強引な真似はしない。多分。



でもオレが俺の中にいる以上、オレは望まれて生まれたのだろう。…俺が矛盾してるから、責任転嫁で代わりの人格にオレが生まれたのだろうか。全ては推測でしかないけどオレがいる事実はどうやったって消えやしない。

どうしてだろう、守りたいのに傷付けるのは。
矛盾の多い世の中だけど、オレの考えることはよくわからない(俺の考えることもよくわからないけど)。

とりあえず、オレを生み出したのは紛れも無く俺で、結果月子を傷つけているのも俺で。



なんだ、所詮俺は偽善者か。








自己愛主義者は語る
(自分のために彼女を守りたくて)
(自分のために彼女を傷つけるんだ)





07/01 Suzuya Tohzuki
HAPPY BIRTHDAY!



2011/08/04