ある休日の朝。 昨日の情事の余韻に浸っていたかったのに、そんな願いは自然光によって遮られた。 カーテンの隙間から漏れている太陽の光が自分の瞼を突き抜けてくる。そんな光が眩しくて、眉間に皺を寄せ、ゆっくりと目を開く。 ベッドサイドにある目覚ましに手を伸ばし、時間を確認。 ……なんだ、まだ7時じゃないか。 休日にしては早い時間に目覚めてしまったなぁ、と呑気に欠伸をしながら思った。 ふと、自分の横の気配に目を向ける。 全く、無防備な寝顔。 昨日とかの最中の艶のある顔もいいけど、やはりあどけなさの残る顔を見ると安心する。 この子は自分より子供なのだ、と。 その事実は僕のマイナスな事実を一時的に塗り潰してくれるけど、性質的に水溶性みたいで僕が欲という波に呑まれるとどこかへ消えてしまう。 そうして僕はまた自分の粗悪な性格に悩まされるんだ。 けど。 「い、く……?」 「ああ、起きたの?おはよう」 「ん……」 まだ完全には覚醒していないらしく、目を擦り眠そうにしている姿はとても愛らしい。 ちょっとした、小動物のようだ。 こんなかわいらしい姿を見てしまうと自分は悪くない、悪いのは……と責任転嫁することを正当化してしまいたくなる。 実際、正当化したとしても僕を否定する人は一人しかいないだろう。 目の前にいる、君しか。 「まだ早いから寝ててもいいけど。昨日は無理させちゃったしね」 変に含みを持たせて言うと、僕の言葉には過剰に反応するのか、まだ眠そうにしていたのに一気に顔が赤くなった。 「……郁のばか」 「僕は君のことをただ心配してるだけだけど?」 「うっ……」 そう言って(呻いて?)君は枕に顔を押し付けた。 そうそう、素直に君を心配したのにそんな風に考えちゃうなんて、本当、ある意味君は変わったね。 ま、大体僕のせいなんだけどさ。 「でも、本当にまだ寝ててもいいよ?まだ眠いでしょ?」 「うーん……」 実際、無理させてしまったのは本当。 僕が忙しくて月子に触れられなかったのが事の始まりで、やはり僕は男だから我慢ができなくて、やっと触れることのできた昨日は理性を飛ばして終始月子を翻弄しつづけた。もう無理だと言う彼女を無理矢理付き合わせてしまったのだ。 「月子?」 いつまで経っても反応のない月子に、僕は心配になる。 もしかしてもう寝てたりとか……。 「…っ、ねっ、ねてないよっ!」 寝てたのか。 全くこの子は…と微笑みを浮かべながら溜め息をついた僕はいいことを思い付いた。 「そうだ、一緒に寝ようか」 「へっ!?」 「一人じゃ寂しいでしょ?だから僕が添い寝してあげる」 「添い…っ、って、あ、郁…っ!」 提案というには難しいくらい相手の意図を汲んでいないその思い付きを発表したあと、すぐに彼女を抱いて横になる。 「郁…あの、その、」 昨日のままだからもちろん二人とも何も身につけていない。 それが恥ずかしいのか僕の腕から逃れようともがいてもその事実に気づき急に動きを止めたりと実に面白い。 彼女が僕の腕の中にいる。それはまるで朝食のパンに塗るジャムのように甘ったるいひとときで、だけど甘いだけじゃなくて、あとから何度もやってくる恥じらいという名の酸味が、そんな味とっくに慣れているはずの僕にいつも効くから、決して飽きはしない。 そう、飽きはしないのだ。 「おやすみ」 「うぅ……」 こんなんじゃ寝られないよとか何とか声が聞こえた気がしたが、そんなのは無視をして。 「ほーら、おやすみは?」 「おや、すみ……」 今はただ、君を胸に抱いて、甘い甘い微睡みの中を旅しようか。 クランベリーソースに舌を這わせて (君を感じていよう) 06/09 Iku Mizushima HAPPY BIRTHDAY! 2011/06/15 |