雨が降りしきる踏切で、私は立っていた。 けたたましい警告音が辺りに鳴り響いている。うるさい、うるさい、と、私は耳を塞ぐ。 今度は赤いランプがチカチカと光り始める。やめてよ、やめてよ、と、私は目を瞑る。 そんな私はある気配を感じた。 ああ、これは懐かしい、あの日のあの人の感覚……。 私は目を開けた。 私の目の前には思った通り、俺様だけど優しくて甘い愛しい人が。 私は耳から手を外してにっこりと微笑みかけるけど、当のあの人の目は私の瞳を見ているはずなのにどこか遠くを見ているようで、全くもって動かなくって。 焦れったくなって私はあの人に近付く。 その時、すっと、止まれと言わんばかりに出された手に私は思わず立ち止まってしまった。 どう、して? 私は近付きたいのに、貴方は、近付いて欲しくないの?私が欲しくないの? 聞いても聞いても答えてくれない。 目は口ほどに物を言うのだから、瞳を覗こうとしたのだけれど、まるでただのガラス玉のように私の不安げな顔だけを映していた。 ショックだった。 私は求めて欲しいのに、どうして求めてくれないの……! だんだんあの人の顔を見ていられなくなって、俯く。 私の頬を撫でるはあの人の温かい手ではなく、冷たくてほんのり温もりのある水。 雨とはまた違うそれに、私は更に暗くなっていく。 どうして私に触れているのは貴方じゃないの? すると、ふわり。 雨が止んだかと思ったら、私は貴方に包まれていて。 ぎゅっと強く抱きしめられて(ああ貴方の温もり)、耳元で囁かれた(ああ心地好い低さの音色)。 「 」 「…ぁ……」 強い衝撃を感じた。 ショックとか、そんなマイナスなものではない、精神的なものでもなくて。 ああ私の丁度欲しかった『 』……! どくんっ、と大きな鼓動を感じた後、 私は、自分の中に小さな鼓動を感じた。 騒音の中の静 (鼓動を、分けてください) 04/19 Kazuki Shiranui HAPPY BIRTHDAY! 2011/04/23 |