見つめ合う、二人。 貴方の指が私の頬を撫でて、そっと、その下の首筋へとなぞっていきそのまま下へ行くのかと思いきや、貴方の指は鎖骨で停滞して、また首筋へと戻っていく。 それを何回か繰り返されたから私はなんだか擽ったくて、焦れったくて、身を少し捩った。 「ん、」 「擽ったい、か?」 こくっと首を縦に振ると、ふっと零れる微笑。それとともに額に落とされる口づけ。ふと視界に入ったはだけたワイシャツから垣間見える逞しい肉体に、私の思考は乱されて、狂わされて。その胸に私を抱いて眠らせてと乞いたくなる。 「どうしてお前は、こんなに白いんだろうなあ」 「っえ、」 「ったく、衝動を押さえ込むのに必死になってるこっちの身にもなれっての」 「なん、の」 「……わからないなら、いいわ」 「え……んんっ」 多少強引に奪われた唇も次第に熱を持ち始めていたから、もっと激しくしてその熱ごと私を奪ってと乞いたくなる。 そうやって乞ってばかりの私に嫌気がさしてきたころ、私から唇を離した彼はふと、言葉を零した。 「もっと、堕ちろよ」 「っ…、」 情けない表情をしながらも、その目に映るは情欲の色。私を求めている色。 ああ、その色が好きなの。 もっと見たいの。 私しか求めない貴方を。 その色を自分の瞳に映して、私は更に乱される。 ああ、もう、堕ちてるよ。とっくの昔に、私は貴方に堕ちている。じゃなきゃこんなにも愛しいと思えない。こんなにも求められない。 「犬、飼く、ん」 じっと情欲の色を見つめる。 自分の鼓動が、だんだん耳につくほど大きくなってゆく。 貴方の鼓動は? まだ、聞こえないの……? 「狡いな、お前は」 そう言って彼は苦笑。 そうして私は、艶笑。 純潔の崩落 (最初から、なかった) 2011/04/01 |