inu14f | ナノ













「げほっ…」



ああ、またか。

咳込んだ貴方の目の前には私。
今正に行為の真っ最中。


「だいじょうぶ?」

「…ああ、」


虚ろな瞳、大丈夫だなんて言わないで。
絶対大丈夫じゃないよ。


「かぜ?」

「っ……多分、」

「はやくなおしてね」

「……ああ」


そう言った貴方の瞳には私。
私だけが映っているの。
ああ、なんて嬉しいの。


「ねえ、はやく、」

「わ、かった」


止まっていた腰が動き始める。
だんだんと早くなる律動。
それと一緒に私の意識もだんだんと飛んで行きそうになって。

そんな中思い出したことは、貴方が風邪を引いているかもしれないということ。



ねえ、粘膜感染って知ってる?
ねえ、その風邪を私に移してよ。
ねえ、私の中に貴方のそれを移してよ。
ねえ、早く、出してよ。



どこへ行くのかわからない意識の中で、私はただそれだけを必死に乞うた。










吐くならここにしなさいな
(頂戴頂戴と乞うしか出来ないから)





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2011/03/28