手に入らないって思っていた存在が今、この腕の中にあるということ。 それはなんて幸福なことだろう。 だけど、それ以上を望むなんて。 「ぁ、…っん、」 予想以上に白い肢体をゆっくりと優しく愛撫してやると、それに比例して紡がれる嬌声。 「大丈夫、か?」 「ん、へーき」 ふわっと笑うお前は正に純白の天使かのようで、そんなお前を俺は今汚そうとしているのだ。 背徳感に押し潰されそうになりながら、必死に彼女の快感を引き出そうと全身を愛撫する。 俺がそっと触れる度に身を捩る夜久がさっき天使と形容した割にはとても艶めかしくて俺は酷く興奮した。 そして自らの快感も得るために彼女の秘部に指を添える。 「あ、」 「慣らす、から」 「っん」 今のは喘いだのかいいよという合意の声なのかわからなかったが、熱に浮された俺の思考は自分のいいようにとったらしく、声を聞いた瞬間夜久の中へと自分の指を侵入させた。 「ふあっ、あ…」 あいつの中は肌同様、いやそれ以上に熱く、差し込んだ指が蕩けてしまいそうだった。 その熱さに一気に事を進めたくなってしまった俺の思考を無理矢理冷やしつつ、内壁を擦り快感を与える。その間にもくちゅくちゅと厭らしい水音が響いて俺の思考を更に狂わせる。 「んぅ…ん……あっ、」 イイところに指が当たったらしく、くぐもったものではなくはっきりとした嬌声が夜久の口から紡がれた。 「ここ、か?」 「あ、んっ、そこぉ…っ」 舌足らずの声はイイ、と噂には聞いていたが、これほど理性の崩壊を引き起こさせるとは。 ここで急いてはいけないと思いつつも早く熱を感じたい俺は指を増やしあいつがイイと言ったところを重点的に攻め中を慣らす。 「あぁっ、ん…っ」 とろとろの愛液が十分に流れ、もういいだろうと思ったころに指を引き抜き、その代わりに俺は自身を押し当てた。 「ぁ、あつ、っ…」 「いれる、ぞ」 「うん…っ、ああっ!」 背中を反らし快感に打ちひしがれる。この光景は何とも背徳感の込み上げるものだなと客観的に判断をしたのも束の間、そんな俺に喝を入れるかのように酷い快感が襲った。 予想以上に気持ちいい中の締め付けに俺は思わず出してしまいそうになったが、これで出したらいくら童貞とはいえ男のプライドが廃ると変な意地でなんとか持ちこたえ、奥までゆっくりと差し込み、ついでに早く動きたいと高ぶる気持ちをぎりぎりで抑え、夜久が落ち着くのを待った。 「大丈夫か」 「は、ぁ……う、ん…」 少し苦しそうな顔を見せる夜久に、なるべく慣らしたとはいえやはり初めては痛いのだろうかと内心焦っていると、そんな俺の様子を悟ったのか夜久は天使のようなふんわりとした笑顔を俺に向けた。 「わたしはだいじょぶ、だから」 「夜、久」 「い、よ、うごいて、っ」 「けど、」 「わたしも、ほし、から…」 「……っすまん、」 「あやまんない、で…あ、あぁ…!」 なあ、人間ってのは本当に欲張りだよなあ。 こんなにも煩悩に塗れている。 でもそんな俺をお前は受け入れてくれた。 加えて求めてもくれている。 それにもまた感謝して、なんて幸福なことだろうと言い聞かせて。 それでもやはりそれ以上を求めはじめたら止まらなくなる。 結局人間の貪欲さは底知らずだ。 そんな結論を導き出した俺は、どうしようもないほど大量に生成されるこの熱さを、あいつの中ではなく一枚の薄い隔たりに吐き出した。 唯一二人を隔てるは (一枚の高分子化合物) 2011/03/21 |