軽いリップ音を立てながら私の体中に熱を与えていく貴方に、それとは反対に私の心は奪われていく。私はその行為をただ見ることしかできなくて。 生まれたままの姿で折り重なる私と貴方の境界線は二枚の皮と少しの肉片のみ。 あともう少し、あともう少しで一つになれるというのに、なんて残念な事実。 ふとした拍子に顔をあげた貴方と目が合った。 いつもの優しく慈悲に満ちた眼差しとは全く違う、まるで獣のように私のことを貪ろうとする貴方の目線に、私は蛇に睨まれたみたいに動けなくなる。 う、わ、 くらって、する。 「……いい、か?」 何がいいかなんて最初から私は承知しているし、しかも貴方だっていいかどうか聞かなくたってこの行為の始めから承知の上でしょう? 赤く上気した私の頬に冷たい貴方の手を添えられた。先ほどから続いているこの行為は体を熱くするのが一般常識のはずなのに、なんで、貴方の手は冷たいの?でも、ああ、この熱さと冷たさのコントラストが、気持ちいい。 私は小さく頷いて、瞼を閉じながら、その中にそっと光を封じ込めた。 熱におどらされる (吸熱して、発熱します) 2011/03/04 |