攻める、大学受験、だなんて某通信教育のキャッチフレーズじゃないけど、俺は今正にそんな感じだった。 だってあいつと同じ大学志望だということがわかったから。 俺は必死で勉強した。 元々成績は悪い方ではなかったが、何しろ志望大学は国立であるため、一般の生徒より多くの教科を勉強しなければいけない。 俺はこれ以上ないんじゃないかというぐらいに努力した。 全ては、あいつといられる未来のために。 まあその望みが叶うかどうかなんてわからないし、もしかしたらあいつと他のやつがくっつく、なんていう未来が待ってるかもしれない。 そんな最近やってる某魔法少女アニメ、皆のトラウマ製造機みたいな展開があったとしても、俺はそういう現実があることも熟知している。そう、熟知している。 俺はあいつが幸せな顔をしていさえすれば、それでいい。 「犬飼、今日はもう授業ないのか?」 「お、宮地か。午後のは休講になったからないぞー。練習行くのか?」 「ああ、そのつもりだ」 「じゃあ俺もお供させてもら、」 最後まで言い切る直前、ベンチから立ち上がった俺の視界にあいつの姿が入った。 歩きながら楽しそうに友達と談笑する姿。と思いきやその後ろからあいつの名前を呼ぶ声が聞こえ、それで振り向いた瞬間、あいつの顔に溢れ出す、笑顔。 ああ、あいつは弁当を忘れたのか。それにしてもまだ作ってもらってたとはなー。昔築いた関係は少し変わったものになったとはいえ、早々に断ち切れるなんてことはないんだな。 「犬飼?」 「いんや、何でもない。……ほーら行くぞー」 「あ、ああ、」 俺は昔築いた関係をいつまでも大事にして、断ち切ろうなんて、思わないけど。 いや、それが今も続いているほんの少しの絆だからか。 僅かな希望を、捨てられない。 単なる臆病者なだけだ。 現実など、疾うに認識しております (こっち向くわけねえのに、な、) 2011/02/27 |