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おいこらちょっと待てなんだこの状況。
俺は絶対に認めたくないぞこんな現実。
この俺が抱きしめられているだと……。





「かーずきちゃんっ、」



この独特な呼び方は一人しかいないと振り返ろうとしたその途端、抱き竦められて俺の体は硬直した。


「くひひっ、一樹ちゃんはかわいーねー」


とか何とか言いながら右手でくるくると俺の髪で遊んでいる。一方左手は俺の腰にしっかりと回され固定されていた。
だから何なんだよ桜士郎、お前おかしいぞ、というかこいつはいつもおかしかったか、いやでもかわいいとか言わねえだろいつもは!しかも俺様に向かってかわいいとは何事だ。


「……おーしろー、」

「本当、かわいい、」

「いっ……!?」


その言葉が聞こえた後に、桜士郎が今まで触っていた髪の毛の下の頭皮に激痛が走った。それによって反射的に桜士郎を突き飛ばす。
てかこんなに簡単に離れられるならなんで最初からこうしなかったんだ俺!


「お、おま、髪……!」


桜士郎の右手には俺の髪が一本、そしてそれをじっと見つめるこいつは、急ににやりと口角をあげ、見慣れているはずのこいつの変態な笑い方に似たその仕種になぜか俺はぞっとした。


「……………」


桜士郎は沈黙を保ち、怪しい笑みを浮かべたまま俺のほうを見てきて、何をするかと思いきや、


「食べちゃっても、いいかな、」


なんて言って俺の目を見据えたまま、なんと俺の髪を口へと運んだ。


「なっ……!?」


髪を摘んでいる親指と人差し指が口に入り、赤い舌でくちゅり、なんて卑猥な音を立てながら俺の髪を自分の指ごと淫靡に舐める。


「ねーえ、どう思う?」


自分の指をくわえながらくつくつと喉を鳴らすように笑うそんな桜士郎に、俺は息を飲み、その場から動けなかった。






詰まる質問
(そっと近付いたら、奪われた)





2011/02/24