6-7 | ナノ













早く、早く証が欲しい。
私はここにいるのだと。
早く、証明してみせて。





ピンポン、とインターホンの音の後に、中から扉に駆け寄ってくる足音。
開かれた扉から、愛しい人。


「どう、したの、こんな遅くに、」


私の突然の訪問に動揺しているらしく、いつもの郁らしくない。


「……………」

「……とりあえず、入って」


何も言わない私に痺れを切らした郁は夜中にも係わらず、私を部屋の中へ招き入れてくれた。

何回か来たことのある郁の部屋だけど、いつもは短く感じる(物理的にも短いんだろうけど)廊下がとても長く感じた。
その廊下の途中で、私は耐え切れず、郁に後ろから抱き着いた。


「っ……、本当に、どうしたの、」


郁が私を心配してくれてる。
いつもならそれだけで嬉しいはずなのに。
ああ、ダメだ。私のことを心配してくれる郁の顔が頭に浮かぶけど、それじゃあ足りない。私のことを想ってくれてるだけじゃ、足りない。
何時になく欲求不満(とも言い難い感情が胸の奥に渦巻いているが)な私は早く、強く、抱きしめて欲しくて。もっと言うと抱いて欲しくて。



ねえ、早く、郁のその熱をちょうだい。
それで私の中を熱くして。
ちゃんとした体温を、感じさせて。

私が今生きているって、実感させて。



「抱いて、欲しいの」


切羽詰まったようなそんな私の言葉の後に、郁が生唾を嚥下する音が久々に聞こえた。










生体反応は貴方の熱で
(もっと、もっとよ、)
(激しくして、私を生かしながら殺すくらいの快感を、ちょうだい)





2011/02/18