早く、早く証が欲しい。 私はここにいるのだと。 早く、証明してみせて。 ピンポン、とインターホンの音の後に、中から扉に駆け寄ってくる足音。 開かれた扉から、愛しい人。 「どう、したの、こんな遅くに、」 私の突然の訪問に動揺しているらしく、いつもの郁らしくない。 「……………」 「……とりあえず、入って」 何も言わない私に痺れを切らした郁は夜中にも係わらず、私を部屋の中へ招き入れてくれた。 何回か来たことのある郁の部屋だけど、いつもは短く感じる(物理的にも短いんだろうけど)廊下がとても長く感じた。 その廊下の途中で、私は耐え切れず、郁に後ろから抱き着いた。 「っ……、本当に、どうしたの、」 郁が私を心配してくれてる。 いつもならそれだけで嬉しいはずなのに。 ああ、ダメだ。私のことを心配してくれる郁の顔が頭に浮かぶけど、それじゃあ足りない。私のことを想ってくれてるだけじゃ、足りない。 何時になく欲求不満(とも言い難い感情が胸の奥に渦巻いているが)な私は早く、強く、抱きしめて欲しくて。もっと言うと抱いて欲しくて。 ねえ、早く、郁のその熱をちょうだい。 それで私の中を熱くして。 ちゃんとした体温を、感じさせて。 私が今生きているって、実感させて。 「抱いて、欲しいの」 切羽詰まったようなそんな私の言葉の後に、郁が生唾を嚥下する音が久々に聞こえた。 生体反応は貴方の熱で (もっと、もっとよ、) (激しくして、私を生かしながら殺すくらいの快感を、ちょうだい) 2011/02/18 |