無理だ、抑えることなんて。今までたくさん抑えてきたんだから、それが一旦解放されたら止められるわけがない。 「い、犬飼く……んん、」 その綺麗な唇を貪ることしかできない俺を必死に止めようとする夜久。 いや無理だろ。お前のそのか細い腕じゃ、男の俺の力に敵わない。 「あんまり声出すと、たぶん宮地たちに聞こえる」 「……っ、」 「男子更衣室との間に壁一枚しかないんだぜ?」 そう、ここは神聖な弓道場の女子更衣室。 各自の練習も終わり、俺が一番最初に着替え終わったため男子更衣室の外に出ると、夜久がちょうど練習を終えたところだった。 更衣室に人がいるとはいえ、今のこの空間には俺と夜久の二人だけ。 その状況に俺の中の何かが疼き、着替えに向かうという夜久と共に悪乗りで女子更衣室に入ったのだ。 「い……!?」 一緒に入ってきた俺に驚いたのか、俺の名前も紡げなかったその唇に、キスを一つ。 そのあとギュッと思い切り抱きしめると、夜久も控えめながら抱きしめかえしてきた。 「犬飼くん……ダメ、だよ。入ってきちゃ、」 女子更衣室に男子がいるという未知の感覚に震えているのだろうか。いつものハキハキとした感じではなく、何かに怯えているような喋り方をする夜久に俺はどうしようもなく興奮してきて。 「……ひゃ、」 夜久の弱い耳にキスをした。 「なあ、最近部活で忙しくてこういうことしてないだろ?」 「あ、ぅ……」 耳、頬、首筋……と、次々にキスを送ると小さく発せられる淫らな悲鳴。 「で、でもここ……!」 「神 聖 な 弓道場ってか?」 俺がわざとらしく形容詞を強調して言うと首をブンブンと縦に振った。 ああ、かわいいお前の望みなら、いくらでも叶えてやりたいんだけどな、 「でもわりぃな、止まんねえわ」 「え、ゃあ……!」 首筋に噛み付くようなキスを送る。夜久の体の震えが夜久と俺が密着しているところから直接的に伝わってきた。 その震えに加えて、さっきから聞こえてくるかわいい声と、少し嫌がる仕種とで、俺は身も心も大分高まってきてる。 いや、理性なんてもんはこいつを手に入れた瞬間からもうぶっ飛んでる。 だからちょっと、性的な事情で無理だわ。 「ごめんな」 謝罪の気持ちなんて少しもこもっていない言葉を吐き出し、俺は夜久のそれへ唇を落とした。 骨の髄から愛してる (お前へは脊髄反射で愛を伝えてる) 2011/02/15 |