どうして独りじゃダメなんだろう。 どうして誰かに縋ろうとするんだろう。 慣れた、だなんて。 そんなのは幻想にしか過ぎなかった。 だって現に彼女を手に入れて遠い昔に閉じたはずの僕の心は呆気なく開かれてしまった。自分でも驚くほど呆気なく。 まあそういうことに対する彼女の能力がただ長けているだけかもしれないけど。 そう、彼女はその名前に恥じず、まるでアルテミスの生き写しかのように、とても美しく、とても強い。 他の生徒たちを引き付ける何かを持っていることは間違いないだろう。 それに比べて僕は……なんてわざわざ言葉にしなくても自分の中でしっかり弁えてるからいいか。 彼女は本当に美しく強い。 僕にはもったいないくらいの女性ではないかと思うほどだ。 最初はまだ恋愛の本質をわかっていないお子様だと思っていたけど、逆に僕のほうがお子様だった。 過去に捕われて真正面から見据えたくなくてずっとずっと逃げてきた、ただの臆病者。 そんな僕に手を差し延べてくれたのは彼女だった。 一時はそれを振り払ってのけ者にして、でもそれでも懲りずに手を差し延べる。 どうして僕にそこまでするのかわからないけれど、それによって結局僕は救われたわけで。 今では感謝しているよ。恥ずかしいからありがとうなんて真正面から言えないけど。 だから、僕は君に触れて、この気持ちを伝えるとしよう。 さあ君に、僕からの精一杯の想いを。 抱擁に想いを込めて (君からもくれるよね?) 2011/02/12 |