今回のことで一つわかったことがある。 人間ってものは人の発言にあまりに驚きすぎると質問攻めをするものらしい。 あまりにも唐突に出来事が起きたもんだから、俺の弱っちい脳みそは正常に動いてくれなくて、そんなことが頭の中をぐるぐると回っていた。 「……へ?」 俺の目の前で顔を赤くしている夜久。 つーかこの状況自体よくわからんのに……あの、今、なんとおっしゃいまして? 「だ、だから……私、犬飼くんのことが、好き、です……」 今日の掃除当番は俺と夜久で、その掃除という練習後の一仕事も終わり、後は帰るだけ、となって力を抜いていた俺はとんでもない空耳を聞いたかと思った。 夜久が俺のことを好き……? 「えっ、と……」 「いきなりだから困るよね……」 困ると言いますか……何てったって俺は3バカと称されるうちの一人ですからよく状況が読み込めてません。 「……なんで、そんないきなり?」 「……ず、ずっと前から好きだったの。でも犬飼くん、私のことなんてただの同級生、部活仲間、としか思ってないんだと思ってたから、言えなかった」 そんな少女漫画の告白シーンみたいな台詞を恥じらいながら言ってる夜久マジでかわいい……じゃなくて!そんなに想われてたらしいのに気付かない俺って……夜久のこと言えねえじゃん。 「えーと、夜久」 「うん」 「俺、白鳥、小熊の三人で3バカって言われてるくらいいつもバカやってるんだぞ?」 「うん、でもそういうところも好き。」 「っ……、いつも宮地とかにバカにされてるんだぞ?」 「うん」 「俺サブキャラだぞ?」 「うん、……?」 「本当に俺でいいのか?」 「うん、犬飼くんがいいの」 そう言って笑った夜久の顔には恥じらいとかいつもの微笑みとか全部ごちゃまぜになったかのような表情が浮かんでいて、最高に可愛くて。ああ、お前、本当に今その目線の先にいる人間に恋してるんだな、と明らかにわかるほどだった。 「……………」 えーと……俺の目の前で綺麗過ぎる後ろ髪を無防備に見せてくださってるチャンスの女神様、俺は一生に一度のこのチャンス、一体どうしたらいいんでしょう? 「……っ、」 「わっ、や、夜久……!?」 俺が普段は使わない頭の部分で懸命に考えていたところ、ずっと何も言わない俺に痺れを切らしたのか、夜久がいきなり抱き着いてきた。 おい、ちょっとそういうの、高校生の健全な男子にしちゃいけないぞ……! 「好き、なの……」 俺の胸元に顔を埋めながら必死に伝えてくる夜久。 俺だって自分の気持ちに薄々は気付いていた。でも学園の女神様がそう簡単に、しかも俺の手に入るわけないから、諦めていた。それに手に入ったとして、こいつは俺と一緒で幸せになれるのか?そう考えたら絶対に動けなかった。そう、俺よりもっといいやつはいっぱいいる。力強く守ってくれるやつもいれば、夜久の知らないところで守ってくれるやつもいる。だから、こんな中途半端でヘタレでいつもバカやってる俺なんか……。でも、それでも夜久は俺を選んでくれている。 ……なら、少しぐらい自惚れたとしても、神様は怒らないだろうか……。 俺はまだ迷いに迷っていたが、無意識に動いていたらしく、いつの間にか俺の腕は夜久の背中に回されていた。 戸惑いの行く末 (結局、抗えないのか) 2011/02/10 |