10-9 | ナノ











知らないうちに晒されてる狂気。
わからないの、自分のことなのにね。



「……おい、どうした?」

「い、いえ……」


なんでもないんです、本当になんでも。
だから気になんてしなくていいんです、いやお願いだから気にしないでください。


「月子……」


貴方が名前を呼んでくれる、ただだけで軽い快楽を感じて体が震える。ああ、それだけで軽くイけそうな気がするの。
それくらい、貴方に深い感情を持っているんです。


「愛してる」

「私も、です……」


それなのに、それなのに、どうして?

きちんと感じているよ、愛されてるってわかってるよ。でも、疑っちゃうの。
本当は私のことなんてどうでもいいんじゃないかとか、ちょっとでも生徒に手を出した責任感から相手してやってるだけなんじゃないかとか、そんな無粋なことを考えてるの。
馬鹿ね、この人が私のことを愛してるかなんて、言動と行動を見ればわかるじゃない。
仕事の合間を縫って愛の言葉を囁いてくれたり、セックスのときに自分の快楽に溺れそうになりながらも私を気遣い労りながら愛してくれたり。
そのほかにもいっぱいいっぱい、注いでもらってる。

それなのに私は、疑いの眼差しを貴方に向ける。
貴方はわかっているのかな?
この私の卑屈さを。
それよりももっと酷い、感情を。



ああ、そういえばいつの日か、何が自分をそんなにさせるのかわからないと言いましたね?
住む世界が違うから、届かないかもしれないけれど。

だから今、教えてあげます。










ねえ、伝えたいことがあるの
(見えないものは怖いんです、よ?)





2011/02/09