3-1 | ナノ











久しぶりに二人で過ごすことになった休日。哉太はいつも色んなところへ飛び回っているから、私が休日になってもなかなか二人で過ごせることがなかった。でも今日は哉太も家にいて、私もたまたま休日で。せっかくだからどこかに出掛けようか、っていう話も出たけど、二人で静かに過ごすのもいいということで、今日は家にいることになった。

でも家にいる、となると、





「かな、たっ……!」

「久々に二人きりだからな。俺達の間にはスキンシップも大切だろ?」


こういう雰囲気になるのは必然的で。私たちはベッドの上で向かい合っていた。哉太は悪戯っ子のように笑って私の唇に口づけてくる。


「ん、ぅ……」


深く、甘ーい口づけ。久々のそれに私は完全に酔わされて、ふわふわと体が浮かんでいく感覚に陥った。そしてそのまま胡座をかいた哉太の膝の上に座らせられる。


「はぁ……あ、っ!」


唇が離れたと思ったら、少し膝立ちにさせられて今度は首筋へと移った。つーっと鎖骨から首筋を舌で舐められて、私は体を震わせて、哉太の肩をきゅっと掴んだ。


「お前はほんっと、感じやすいのな」

「あんっ、ちが、う……」

「違う?こんなに善がってんのにか?」

「や、ぁ……っ、」


どうして首筋だけでこんなにも感じてしまうんだろう。私が感じやすいから、とは思いたくないけど、だからといって哉太がうまいから、とも言いたくない。だってそしたら、哉太のほうが経験があるみたいで、嫌だから。まだ変なライバル意識が残ってるみたいで無駄に意地を張ってみる。……まあ哉太に翻弄されてる時点で負けてるといえば負けてるんだけど。


「……あっ、んん……」


軽いリップ音を立てながら私の首筋を愛撫していく。それによってじわじわと沸き上がってくる快感に堪えながらふと薄く目を開けると、私の目に哉太の耳が映った。


……あれ、哉太の耳赤い……。
もう付き合って何年にもなるとはいえ元から哉太は恥ずかしがり屋だからやっぱりまだちょっと恥ずかしかったりするのかな……。


そんな思考が頭を過ぎったかと思えば、その下に流れているであろう血の色のように鮮やかに染まった耳に、私は自然と口づけていた。


「……ゃっ……」

「え?」


いつもの声とは全く違う、かといって情事中の堪えている声とは違う喘ぎが哉太の口から出た。
今の……。


「ば、馬鹿、お前っ、何してんだよっ!」


私の首筋から唇を離し、さっきよりも赤い耳、更には顔まで赤くして、私が触れた耳を押さえながら裏返った声で私に抗議した。


「ふふっ、哉太、もしかして耳弱いの?」

「う、うっせ……」


そう言ってそっぽを向いてしまった彼。さっきまでの余裕はどこへやら。だけど、ああ、こっちのほうが昔と同じようで懐かしくて……。


「哉太らしいかも」

「っ!……ったく、」

「わっ!」


形勢逆転、いきなり押し倒されて、哉太が私の上に覆いかぶさる。勢いがよくてベッドのスプリングがギシッ、と悲鳴をあげた。


「哉太っ……!」

「こーの、おてんば。そんなにお仕置きされてえのかよ?」

「ち、ちがっ……んっ!」


否定の言葉は早急にかつさっきよりも強引に私に口づけた哉太の唇に吸い込まれ消えた。


ちょっと怒らせちゃったかな?でもいつも家を留守にしてるんだもん、少しくらい……悪戯してもいいよね?

私達の幼なじみという関係は恋人という関係に変わってしまったけれど、なかなか変わらないものだってあるわけで。それが離れている私達の安定剤になる。でも安定剤だけじゃ、不安になっちゃうから、少しくらいは刺激物を、私にくれたっていいでしょう?


そう思いながら、私はそっと目を閉じて哉太の甘い口づけにまた溺れていった。










古来のルチルに+α
(それで錆び付きはしないわ)





2011/02/02