危険だと、心が、私に訴えてる。 だけど体は動かなくて、全然言うことを聞かない。 私、これからどうなるの……? 「月子……」 貴方の声が何処か遠いところで聞こえる。 おかしいね、今貴方に抱きしめられているはずなのに。 「……あっ………」 いつの間にか腰に回された腕に密着した体を更にくっつけるようにぐっと引き寄せられる。 「……こっち……向いて………」 「……んっ………」 顎を持ち上げられて無理矢理合わせられた唇から貴方の体温が伝わる。 外気に晒されて冷たくなっているはずの私の唇が、どんどん熱を帯びていく。 「……ふ、……んぅ……」 そっと唇を割られ舌が私の中に入り込み、くちゅり、と甘美な音が響いた。 ここはいつもの屋上庭園で、課題をこなすために二人で天体観測をしていた。はずだった。 「なあ、キス……してもいいか?」 恋人になって半年くらい経つからキスは何回もしたことはある。 いきなりではあったがその申し出に私はもちろん首を縦に振ったのだが。 「……んっ、ぁ………」 こんなに濃厚な、フレンチキスだったなんて。 いつもは唇を合わせるだけのキスなのに、今日は舌を入れられ、何度も角度を変えられ、息も儘ならぬほど激しいキスを贈られていた。 「……ぅ……」 軽いリップ音を立てて離れた唇を銀糸が繋ぐ様子が目に入ったが、先ほどの激しいキスですっかり息の上がった私には、気にするまでには思考が回らなかった。 「……す、ずやぁ……」 うまく働かない思考、高められた熱が、私を犯して、正常な行動を妨害する。 私の伝達装置は、呂律が回っておらず、今目の前にいる彼の名前、呼び慣れたそれを紡ぐことしか出来なかった。 「……っ、それ……反則……」 「……えっ、……ん……」 私の何がいけなかったのか、更に錫也を煽ってしまったようで、再度口づけられ、呼吸を奪われた。 とろとろと、いや、どろどろと、体の中で何かが流れていく。 それは今まで感じたことのない感覚で、戸惑いや怖さが私を襲った。感じてはいけない感覚のように思えて、もしかしてこれが、快楽、というものなのか、と私は認識した。どんどん淫らになっていく私の体。そして欲望が渦巻き始める心。これらがこれ以上進行するのは危険だとわかっているのに、どうも逃げられない、いや、逃げようとしない私。 そんな私にしたのは紛れも無く錫也。だから、全責任を貴方に押し付けちゃおう。 このままどっぷりはまって、抜けられなくなるくらいの愛をくれる、貴方に。 シアンに毒されて (くらくらとおちてく) 2011/01/22 |