10-7 | ナノ








今私の目の前にいる人の頭の中は、どうなっているのだろう。私と同じように、貴方も私でいっぱいなのだろうか。それとも他の人の記憶で埋め尽くされているのだろうか。後者だとしたら、今のこの状況はどういうこと?





「……星月、先生……」


「………………」



壁に手をついて私を壁に押し付けて、ただじっと私の瞳を見つめるのみで、何も言わない。



「……なん、でしょうか……」


「………………」



私の問い掛けにも答えずただただ私を見つめる貴方の表情は、こんなに近くで見ているのに何故かよくわからなかった。



「………………」



何を考えているのだろう。何がしたいのだろう。私を映しているようで何も映さないその瞳が、これから何を捕らえるのだろう。
……いや。
果たして、何かを、捕らえてくれるのだろうか。



「……あ、の………」


「………すまん」



その一言だけを上辺のように吐き捨てて、星月先生は静かに私に口づけた。










キスのお味はシュガービター
(甘くて苦い、そんな味)





2011/01/19