※結婚後のお話 いつだって貴方は私の傍にいて。 知らないうちに支えていてくれた。 「高校卒業からもう十年かー」 「お前もおばさんになったな」 「ちょっ、……そういう隆文はおじさんになったね」 「うるせー」 カラカラと笑いながら家路を急ぐ。 今日は高校の時の部活の同窓会。 とは言ってもあのときの仲間たちだけの集まりだけど。 一番下の梓くんたちが成人してから再会した私たちは、いつの間にか近況報告会と称して、定期的に飲み会を開くようになっていた。 「えー、宴もたけなわですが……」なんていう今回の幹事である白鳥くんのふざけた司会が入って、本当に楽しいときはあっという間に過ぎ去ってしまうなと笑いながら、また今度と約束を交わし皆と別れ、私たちは家路についていた。 ほぼ半年に一回という結構な頻度だけれど、その度にこの時はこうだっただの、あの時は実はこんな真相だっただのという暴露話が持ち上がったり、そういえばあいつが付き合い始めただの結婚しそうだのという恋愛トークに発展したりと、話は一向に尽きない。 そしてそれは二人きりになっても同じ。 どちらかが話して、それが終わってもそういえば、とどちらかが自然と話し出す。 自然と会話が続き、盛り上がる。 私たち皆、そして私たち二人、こうして長く付き合えてる理由の一つが、垣間見えた気がした。 今日も今日とて家に着くまでにしていた思い出話の延長で、ふと思い出したことを告げる。 「隆文はさ、いっつも私のこと、心配してくれてたよね」 「ん?そりゃあ、高校でただ一人の女子だったから、心配で心配で……父親みたいな気分だったわ」 ニカッと悪戯っぽく笑った隆文に対して、私は。 「ありがとう」 夕日に照らされてアンニュイになっていたのかもしれない。 少し胸が苦しくなって、神妙な面持ちでその一言を発した。 「お、おい、何かあったのか……?」 いきなり真剣な口調でしゃべりはじめた私に少し動揺している隆文に、私は追い打ちをかけるように「本当に、ありがとう」と一言、口にした。 「月子……?」 心配というよりどうしてそんなに切なげなのかと疑問を持ったかのように隆文が言葉を発した。 「あのね、」 私がこうして隆文の隣にいられるのは、隆文があの時から私のそばにいてくれたからなんだよ?だから、ありがとうって、そう思ったの。 改まるとなんだか恥ずかしいなと思いながら隆文のほうを見遣ると、ぽかんとマヌケ顔。 「……っ俺のほうが、」 「え?」 次の瞬間、温かい体温に包まれる私の体。 「隆文?」 「……俺のほうが、感謝してもし切れねぇよ」 俺と一緒に、こうして歩いてくれて、ありがとう。 少しだけすんと鼻を鳴らした隆文に、胸が苦しくなって、でも安らぎを感じて、じんわりと熱が広がっていく。 出会ってから早十年。 結婚してからまだ二年。 夫婦という新しい絆を結んでからそんなに時間は経っていないけれど、私たちには法律上のつながりよりも長く続いた絆、もっと大きくて切ない大切な絆がある。 お互いにお互いを尊重しあってきたからこそ、こうやってここまでこれたのかな、なんて思いながら、改めて自分を抱きしめる大きくて優しい体温に感謝の気持ちを贈りながら、背中に腕を回し、夕日のあたたかい日差しに包まれていた。 あたたかいということ (いつだってあなたは、自然と私の隣にいるの) 2013/06/11 |